最新記事
戦場ウクライナの日本人たち

元福島原発作業員、起業家、ピカチュウ姿のボランティア...戦火のウクライナで生き抜く日本人たちの実話

JAPANESE IN UKRAINE

2024年6月6日(木)17時00分
小峯 弘四郎(フォトジャーナリスト)

ピカチュウ姿で人道支援

ウクライナを出国した後、ポーランド南部クラクフの同じホテルで偶然出会ったのが、ウクライナ東部に向かうところだった中條秀人さんだ。中條さんは22年4月にウクライナ入りして以来、約2年間にわたって人道支援活動を続けている。ピカチュウの着ぐるみを着て活動していることで知られ、現地での呼び名は「ピカ」だ。

着ぐるみを着るようになったのは、ウクライナでピカチュウは誰でも知っているキャラクターと聞いたから。最初はとにかく不審がられ、戦時中なのに不謹慎とかばかにしていると言われた。ただ、子供たちはとても喜び、次第に親や周りの大人たちも受け入れてくれるようになった。

newsweekjp_20240606024036.jpg

子供たちにピカチュウの着ぐるみを着せて交流する中條さん KOSHIRO KOMINE

日本で建築関係の会社を経営し、安定した暮らしをしていた中條さんがウクライナに来たのは、幼少期の虐待によるトラウマをスポーツで乗り越えた自分の体験を、戦争で心と体に傷を負った子供たちに伝えたいという思いからだ。

まず西部ウジホロドで避難民支援をした後、支援物資を届けるキャラバンを結成してハルキウ州、ドンバス地方、ヘルソン州など前線地域を回り、22年8月には一般社団法人「ウスミシュカ(ウクライナ語で笑顔)」を設立。避難施設の運営など現地に寄り添った活動を始めた。そこでは避難先で生活するのが難しい障がい者など、社会的弱者の人々も受け入れている。

前線地域で人道支援活動を手伝ってくれているウクライナ人の学生から、「僕もピカのように人に与え続ける人になりたい」と声をかけられた。「憎しみや恨みの連鎖ではなく、恩返し、思いやりや優しさの連鎖になっていることがうれしい」と、中條さんは言う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

訂正-米利下げ、差し迫っていない 現在のデータは根

ワールド

イスラエル首相、ガザ停戦交渉開始を指示 人質解放と

ビジネス

米中古住宅販売、7月は2%増の401万戸 予想上回

ワールド

米司法省、クックFRB理事を調査へ パウエル議長に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精神病」だと気づいた「驚きのきっかけ」とは?
  • 2
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自然に近い」と開発企業
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 5
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 6
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 7
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 8
    米軍が長崎への原爆投下を急いだ理由と、幻の「飢餓…
  • 9
    ドンバスをロシアに譲れ、と言うトランプがわかって…
  • 10
    フジテレビ、「ダルトンとの戦い」で露呈した「世界…
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中