最新記事
地熱エネルギー

「スーパーホットロック」地熱エネルギーとは? 地球深部にあるクリーンエネルギー源の「可能性」

The Power Below

2024年5月9日(木)16時20分
ロビン・ホワイト(自然・環境担当)
地中深くの岩体からエネルギーを取り出す技術の開発が進む(アイスランドの地熱井) CARD76/ISTOCK

地中深くの岩体からエネルギーを取り出す技術の開発が進む(アイスランドの地熱井) CARD76/ISTOCK

<私たちの足元に眠る次世代のクリーンエネルギー、地球の熱の恵みを解き放って温暖化と闘う>

地中から取り出すクリーンで、カーボンフリー(二酸化炭素の排出量ゼロ)で、常にアクセスできる再生可能エネルギーという概念自体は以前からある。さらに、新しい研究により、地球の深部にあるスーパーホットロック(超高温岩体)地熱エネルギーは、推定される資源量のわずか1%で石油210億バレル分に相当するエネルギーを供給できることが分かった。これはニューヨーク市の電力需要量の687倍に相当する。

アメリカの非営利団体クリーン・エア・タスク・フォース(CATF)とオランダのトゥウェンテ大学の研究チームによると、アメリカの土地の約20%(約1943万平方キロ以上)の地下約12.5キロより深い所に、こうした超高温岩体が存在するとみられる。最も有望なのは西海岸で、特にオレゴン州とカリフォルニア州に集中している。

CATFのスーパーホットロック・エナジー担当ディレクターのテラ・ロジャースはリポートで次のように述べている。

「今回の数値モデルは予備的なものだが、私たちの足の下にある膨大な量のクリーンエネルギーを解き放つという非常に大きなチャンスを示唆している。世界のスーパーホットロック地熱エネルギーのポテンシャルのわずか1%を利用して、63テラワットのクリーンな安定電力を生産できる。2021年の世界の電力需要の8倍近くを満たせる量だ」

「世界中で数十カ所の地熱井(調査開発用の坑井)が超高温状態に達しており、技術的・商業的に適切な進歩があれば、数十年どころか数年で初期の商業規模の発電所が登場する可能性もある。常に利用可能なゼロカーボンのエネルギーに支えられた安定供給も、遠い夢ではない」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

伊プラダ第1四半期売上高は予想超え、ミュウミュウ部

ワールド

ロシア、貿易戦争想定の経済予測を初公表 25年成長

ビジネス

テスラ取締役会がマスクCEOの後継者探し着手、現状

ワールド

米下院特別委、ロ軍への中国人兵参加問題で国務省に説
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中