最新記事
考古学

「なぜここに?」アレクサンドロス大王の肖像が刻まれた工芸品を「意外な場所」で発見

Metal Detectorists Find "Incredible" Artifact Depicting Alexander the Great

2024年4月24日(水)11時50分
アリストス・ジョージャウ

同遺跡では、戦士の肖像が刻まれた小さな円盤状の装飾をあしらった盾が出土している。その1つは前述のアレクサンドロス大王の肖像が刻まれていて、シェラン島で見つかった工芸品の肖像とそっくりだった。

ただ、描かれていたのが明らかにアレクサンドロス大王だったにもかかわらず、今回の発見からは現段階で答え以上に多くの疑問が浮上した。例えば、このオブジェを制作したのが、やはり鉛を含む合金を彫像の鋳造に使用していたローマ人だったのかどうかがはっきりしない。溶かした彫像からローマ人が鋳造したのか、それとも溶かす工程がシェラン島で行われたのかも不明だ。

もしこれを鋳造したのがローマ人だったとすれば、どうやってシェラン島にたどり着いたのか。ローマが征服した領地が、現在のデンマークの占領地に達したことはなかった。だが、ローマ人はかつてこの地に住んでいたゲルマン人と交易していた。

一方、もしこれがゲルマン由来だとすると、ゲルマン人にとっての重要性は何だったのか。ゲルマン人はこれが戦場で幸運をもたらすと信じたのか。これが誰の顔なのかさえ、認識していたのか。

「彼らがこれを自分たち自身の神と見ていた可能性もある。しかし彼らは知っていたと私は思う。アレクサンドロスの神話は欧州、アジア、北アフリカであまりに大きかった」とオルデンブルガーは推測する。

このオブジェの使い道もはっきりしない。例えば盾の円盤装飾だった可能性も、剣のさやのベルトの一部だった可能性もある。

「この小さな青銅の円盤は、どんなに小さい考古品でも、とてつもない物語を秘めている可能性があることを物語る」。オルデンブルガーはプレスリリースでそう言い添えた。

「これは世界史上、最も有名な人物の1人に関係するスカンジナビア独特の発見だ」

(翻訳:鈴木聖子)

ニューズウィーク日本版 豪ワーホリ残酷物語
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月9日号(9月2日発売)は「豪ワーホリ残酷物語」特集。円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代――オーストラリアで搾取される若者のリアル

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓日米、15日から年次合同演習実施 北朝鮮の脅威に

ビジネス

日立、米国で送配電機器の製造能力強化 10憶ドル超

ワールド

韓国、日本車関税引き下げの影響を評価 米大統領令受

ワールド

バイデン氏、皮膚のがん細胞切除手術 順調に回復=報
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害」でも健康長寿な「100歳超えの人々」の秘密
  • 4
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 5
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 6
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 9
    SNSで拡散されたトランプ死亡説、本人は完全否定する…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中