最新記事
ヘルス

大流行中の「奇跡のダイエット薬」オゼンピック、「鬱や自殺願望」などを引き起こすリスクを新研究が警告

‘Deadly Risk’ of Fat-Loss Drugs

2024年4月12日(金)17時18分
パンドラ・デワン(本誌サイエンス担当)

英グラスゴー大学のナビード・サター教授(代謝医学)に言わせれば、明確な比較が存在しないため、精神面での影響が薬剤と関連しているのか、それとも単なる偶然かを見極めるのは困難だ。

「同様の特質を持つ人が、非GLP-1治療法を開始した場合の精神科的リスクと比較する基準がない」と、サターは本誌に語る。「一般的に精神症状はまれなため、ある種の比較基準がなければ真実には近づけない。頑健性のある研究をさらに行う必要があるが、科学的クオリティーが高く、確固とした比較が可能な研究であるべきだ」

最近、米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部が実施した大規模研究で、こうした比較が行われたが、セマグルチド製剤使用後に自殺願望が起こるリスクの上昇は確認されなかったと、サターは指摘する。「同様の研究をさらに実施すれば有益だろう」

「関連性は確認できないとFDAは発表している」と製薬会社

トベイキらの研究結果について本誌は、オゼンピックとウゴービを発売するデンマークの製薬大手ノボ・ノルディスクにコメントを求めた。

「自発的に報告された有害事象のデータ分析は有益だが、固有の限界があるため、関連性や因果関係について結論を出すことは不可能だ」と、同社広報担当者は本誌宛ての声明で述べている。「自殺願望や自殺行動、その他の精神科的有害事象とセマグルチドの関連を示す信頼性のある証拠を、当社は把握していない」

「FDAは先頃、『これらの医薬品の使用が自殺願望・自殺行動を引き起こす証拠は(同局の)予備的評価では見つかっていない』『大規模なアウトカム研究や観察研究を含む臨床試験の評価でも、GLP-1受容体作動薬の使用と自殺願望・自殺行動の関連は確認されていない』と発表した」

「当社は製品の臨床試験や実際の使用に関するデータを継続的に観察し、患者の安全や医療関係者への適切な情報提供を確保するため当局と緊密に協力している」

「用法を守り、資格を持つ医療専門家の監督の下で使用する場合において、ノボ・ノルディスクはセマグルチド、および当社のその他のGLP-1受容体作動薬の安全性と効果を支持している」

これに対し、トベイキは自分たちの研究結果は「適応外」使用をめぐるより幅広い問題を扱っていると主張する。「必要性がないのに、痩身目的で使用するケースが世界各地で発生している。オンラインや違法市場で販売されている偽造品には、有効成分が含まれていない可能性がある。処方箋なしで入手できるものもあり、使用者の健康に重大なリスクをもたらしている」

「これらの医薬品は2型糖尿病や肥満症の治療に有益で効果的だが、医療専門家の監督下に限って使用すべきだと訴えたい。新しい薬なのだから、精神衛生上の問題を含め、あらゆる潜在的副作用を注意深くチェックする必要がある」

ニューズウィーク日本版 日本人が知らない AI金融の最前線
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月3号(2月25日発売)は「日本人が知らない AI金融の最前線」特集。フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに[PLUS]広がるAIエージェント

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

パキスタンとアフガニスタンの衝突再燃、周辺国や中ロ

ワールド

パキスタンとアフガニスタンの衝突再燃、周辺国や中ロ

ビジネス

JPモルガン、オフショア人民元ロングを解消 元高抑

ワールド

独失業者数、2月は小幅増 失業率6.3%で横ばい
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルーの大スキャンダルを招いた「女王の寵愛」とは
  • 4
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 7
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 8
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 9
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 10
    「まるで別人...」ジョニー・デップの激変ぶりにネッ…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 9
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 10
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中