最新記事
中国

中国警察が表玄関からNATO浸透の第一歩。ハンガリーが中国の警察官招き入れ

China's Police Officers Invited To Patrol NATO Member's Streets

2024年3月14日(木)15時05分
マイカ・マッカートニー
北京の天安門広場で警備にあたる治安警察

北京の天安門広場で警備にあたる治安警察(2024年3月4日)  REUTERS/Tingshu Wang

<中国は世界中に秘密警察の網をめぐらし、中国の反体制派に監視の目を光らせている。ブダペストにもすでに2つの「秘密警察所」が置かれているが、今度はハンガリーの市街地を堂々とパトロールできることになる>

ハンガリーと中国が、治安協力に関する新たな合意に署名したという報道があった。近いうちに、中国警察がハンガリー警察と協力して、ハンガリーの市街地をパトロールすることになる見通しだ。

中国はセルビアとの間で既に同様の合意を結んでいるが、EUおよびNATOの加盟国としてはハンガリーが初めて、「体制上のライバル」と見なす中国の警察官を正式に受け入れることになる。

【動画】さすがに無謀...中国製「ゴルフカート」で進軍するロシア兵、地雷で吹き飛ばされる 衝撃の瞬間が公開

 
 

中国警察は、世界各地の数十に及ぶ都市で密かに「在外警察署」を運営している疑いが取り沙汰されてきた。スペインの人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」が2022年に発表した報告書の中で、中国共産党の対外宣伝工作機関である「中央統一戦線工作部」の活動の一環とみられるこの「秘密警察署」について、海外在住の反体制派や亡命希望者、少数派民族の監視や弾圧を行っていると詳しく述べていた。

ハンガリーの国務省が先週、現地ニュースサイトの「テレックス」に対して語ったところでは、ハンガリーのサンドール・ピンテール内相と中国の王小洪・国務委員兼公安相が交わした合意文書の目的は、交通量の多い観光地での警備態勢を強化することだと語った。

本誌はハンガリー内務省と在ハンガリー中国大使館に書面でコメントを求めたが、これまでに返答はない。

ブダペストにも秘密警察

ハンガリー内務省は「テレックス」に対して、「将来的には両国の警察官が一緒にパトロール業務を行うことができるようになるだろう。それが両国の市民や当局の間での意思疎通や、国内の治安と秩序を改善する助けになるだろう」と述べた。

このような合意は、ヨーロッパ大陸の近隣諸国同士の間では珍しいことではない。ハンガリー内務省によれば、クロアチア観光のピーク期にはハンガリー警察がパトロールに協力しているし、オーストリア警察もハンガリー国内の主要な観光地でのパトロールに協力している。

だがビクトル・オルバン首相が率いるハンガリー政府は親中姿勢で知られており、今回の合意を受けて、政府がハンガリー国内での中国警察の活動をきちんと監視するのかを疑問視する声が上がっている。

「セーフガード・ディフェンダーズ」によれば、ハンガリーの首都ブダペストにも中国の違法な在外警察署が2カ所あり、これらの警察署は中国・浙江省青田県と福建省福州市の公安当局が運営しているという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、円は日銀の見通し引き下げ受

ビジネス

アップル、1─3月業績は予想上回る iPhoneに

ビジネス

アマゾン第1四半期、クラウド事業の売上高伸びが予想

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中