最新記事
米外交

アメリカの強固な台湾支援を覆すかもしれない1つの要因

US RESOLVE

2024年1月19日(金)16時05分
ロバート・サッター(米ジョージ・ワシントン大学教授)

中国が繰り広げる3面攻撃

これに対して中国は、主に3方面からアメリカに挑戦している。まず、急速な軍の近代化により、領土拡張主義的な行動を取り、インド太平洋地域におけるアメリカの優位を揺さぶっている。第2に、国を挙げて外国企業の知的財産権窃盗や技術移転を推進している。そして第3に、経済力を武器に、大規模なインフラ投資などにより諸外国を影響下に置き、国際秩序を揺さぶっている。

台湾は、アメリカがこの3つの挑戦全てに対抗する上で、これまで以上に重要な位置を占めるようになった。そもそも台湾は、中国の敵対的な伸張を抑える上で、地理的に極めて戦略的な場所にある。また、台湾のハイテク産業は、アメリカが中国との経済競争を続ける上で決定的な役割を果たしている。そして台湾が政治的には民主主義で、活発な市場経済を持ち、国際規範を尊重していることは、アメリカが既存の国際秩序を守る上で重要な意味を持つ。

もちろん中国は、そんな台湾に対して軍事的、外交的、経済的に猛烈な圧力をかけている。このためアメリカは、これまで以上に台湾への支援を強化してきた。過去には中国の機嫌を損ねないように、台湾との関係を目立たないようにしていた時期もあったが、今は昔の話だ。米政府では台湾を軍事的、外交的に支援する動きが着実に進んでいる。

なによりジョー・バイデン大統領自身が、もし中国が台湾を軍事攻撃した場合、アメリカも軍事的に台湾を援護すると繰り返し明言している。ただ、具体的な措置は、アメリカが1970年代から維持してきた「一つの中国」という立場(つまり台湾を支援しつつも、独立を後押しするわけではない)を踏まえた措置になるだろう。

もしトランプが復活したら

米政府高官は、イスラエルとハマスの戦争や23年11月の中国の習近平(シー・チンピン)国家主席とバイデンの首脳会談を受け、台湾への軍事支援を強化するとともに、中国の台湾に対する軍事的・経済的威嚇行為に対抗する姿勢を強めている。

今回の総統選で民進党の頼清徳副総統が勝利すれば、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が築いたアメリカとの緊密な関係が維持されるだろう。頼の最大の対立候補である侯友宜(ホウ・ヨウイー)新北市長が属する中国国民党(国民党)は、定期的に中国共産党と交流があり、伝統的に親中国の党とみられてきた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ノルドストリーム破壊でウクライナ人逮捕、22年の爆

ワールド

米有権者、民主主義に危機感 「ゲリマンダリングは有

ビジネス

ユーロ圏景況感3カ月連続改善、8月PMI 製造業も

ビジネス

アングル:スウォッチ炎上、「攻めの企業広告」増える
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自然に近い」と開発企業
  • 4
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 5
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 6
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 7
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 8
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中