日韓関係に火をつける? 韓国最高裁、徴用工問題で日本企業に賠償命令
2018年の同様の判決後、日韓関係は冷却化したが...... Jung Yeon-Je/REUTERS
<2023年12月21日、韓国大法院(最高裁)は徴用工訴訟で日本企業に対し、賠償を命じた。これに対し、日本政府は日韓請求権協定違反として抗議。2018年の同様の判決後、日韓関係は冷却化した。尹錫悦政権下では、韓国政府傘下の財団が賠償金を弁済する方針を示している......>
2023年12月21日、韓国大法院(最高裁)は、旧朝鮮半島出身労働者、いわゆる徴用工が三菱重工業と日本製鉄(旧新日鉄住金)を相手取った訴訟で、いずれも原告1人当たり1億ウォンから1億5千万ウォン、計11億7000万ウォンの賠償金の支払いを命じる判決を下した。
判決について林芳正官房長官が定例記者会見で「日韓請求権協定に明らかに反している」「極めて遺憾で断じて受け入れられない」と述べ、併せて韓国側に抗議したことを明らかにした。なお、大法院が日本企業に支払いを命じた賠償金は、2018年の徴用工裁判の賠償金と同様、韓国政府傘下の財団が弁済する。
2018年の徴用工裁判と日韓関係の冷却化
2018年10月30日、韓国大法院は4人の元労働者が提訴した損害賠償訴訟で新日鉄住金の上告を棄却した。これにより、日本企業に賠償金支払いを命じた高裁判決が確定した。大法院は翌11月29日にも5人の元労働者が三菱重工業を相手取った訴訟で日本企業の上告を棄却した。
日本政府の抗議に当時の文在寅政権は司法の独立性を主張した。判決に対する事実上の追認だった。日本企業は、賠償問題は1965年に締結した日韓請求権協定で解決済みという日本政府の立場に沿って支払いを拒絶。以後、日韓関係は急速に冷却化した。直後に韓国の軍艦が自衛隊機に向かって火器管制レーダーを照射する事件が起き、翌19年には日本政府がキャッチオール規制に基づいて韓国を輸出管理制度のホワイト国から除外すると韓国内でノージャパン運動が拡散した。また、文在寅政権が日韓秘密軍事情報保護協定GSOMIAの破棄をほのめかし、慰安婦合意を破棄するなど日韓関係は国交正常化以降、最悪となった。
尹錫悦政権下での賠償金弁済と韓国企業の対応
韓国裁判所が日本製鉄(旧新日鉄住金)と三菱重工業の資産差押えに着手し、さらに売却を行うと日韓関係は後戻りできないほど劣悪になると危惧されたなか誕生した尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が、徴用工判決で確定した賠償金と遅延利息を韓国政府傘下の財団が弁済すると発表。ポスコなど11社が寄付金を拠出した。徴用工裁判で勝訴した元労働者と遺族15人のうち、11人が23年7月までに弁済金を受け取った。
韓国政府は、新たに大法院が支払いを命じた賠償金も財団が弁済する方針を示すが、寄付金総額から支払い済の弁済金や未払い弁済金を差し引いた基金総額は10億ウォンに満たないことから、財源の拡充が課題として浮上している。