最新記事
ウクライナ戦争

ロシアの占領地を守るエリート「イルカ部隊」を増強...訓練され、戦場で犠牲になる悲しすぎる姿が撮影される

Russia Deploys Combat Dolphins to Black Sea Frontline

2023年10月28日(土)19時05分
エリー・クック
イルカ

RMMPPhotography/Shutterstock

<以前から軍用動物を利用してきたロシア軍だが、クリミアでは「部隊」を増強する様子が確認され、機雷などで犠牲になるイルカの姿も>

ロシアが、ウクライナの戦闘地域に近い海域に「軍用イルカ」を配備し、黒海でイルカ利用を拡大する動きを見せているという。欧州の海軍専門メディア「ネイバルニュース」の報道によると、クリミア半島西部のエフパトリアからほど近いノボオゼルノエにあるロシア海軍の基地に、イルカの囲いが出現したことが新たな画像で確認された。

■【画像】クリミアで増強される「イルカ部隊」/周辺海域で撮影された犠牲になったイルカたち

イルカの軍事利用は、ウクライナ戦争以前から見られたものだ。ロシアがウクライナの特殊部隊を撃退するため、黒海の基地周辺で軍用動物を訓練・使用していることは以前から報じられてきた。今回の戦争が始まってからは、爆弾や機雷による火傷、またはソナーの影響で死亡したイルカたちの痛々しい写真も、現地では繰り返し撮影されてきた。

米海軍協会は、ロシアによるウクライナへの全面侵攻の開始直後に、セバストポリに駐留するロシア軍が港入り口に「イルカの囲い」を2つ設置したと明らかにしている。なお、米海軍も長年にわたってイルカを使用してきた。

今回の画像が確認されたノボオゼルノエはセバストポリの北方にあり、黒海におけるロシアの主要基地よりも、激しい戦闘が続くウクライナ本土南部に近い。また、ウクライナがここ数カ月で照準を合わせているエフパトリアのすぐ北に位置する。

ウクライナは、2014年にロシアが併合し、20カ月におよぶ全面戦争の足がかりにしているクリミア半島の奪還を宣言している。

イルカで敵のダイバーを撃退

ノボオゼルノエへの軍用イルカの配備は、「この地域で脅威となっているウクライナの特殊部隊に対する防衛」を目的としていると見られるとネイバルニュースは伝えている。また、クリミア半島西部にイルカの囲いが現れたのは今年8月頃だという。

ウクライナ軍は今夏、クリミアでの戦闘を強化し、エフパトリア近くに配備されているロシアの高度防空システムを攻撃した。同時に水陸両用攻撃を実施した後は、セバストポリを長距離ミサイルで攻撃し、ロシアの揚陸艦と潜水艦それぞれ1隻が被害を受けた。

英国防省は6月下旬、ロシアがセバストポリ基地に対して、「訓練された海洋哺乳類の増加」を含む「大規模な強化」を行っていると発表した。情勢報告によれば、同基地の画像には「浮かんでいる哺乳類用の囲いがほぼ倍増」している様子が捉えられ、そこにはバンドウイルカも含まれると見られていた。

英政府によれば、ロシアは様々な任務のために多くの動物を訓練しており、クリミア半島のイルカは敵のダイバーを撃退するためのものだ。また、ロシアの北極海域では、シロイルカやアザラシも利用されているという。


ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド総合PMI、12月は58.9に低下 10カ月

ビジネス

プライベートクレジット、来年デフォルト増加の恐れ=

ワールド

豪銃撃、容疑者は「イスラム国」から影響 事件前にフ

ワールド

スーダン、人道危機リストで3年連続ワースト1位 内
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中