最新記事
注目ニュースを動画で解説

ロシア不在で南カフカス、中央アジアに大転換...「ロシア後」の地政学を展望【注目ニュースをアニメで解説】

2023年10月5日(木)16時10分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
南カフカス、中央アジア「ロシア後」の地政学

Newsweek Japan-YouTube

<ロシアが「不在」にする中、南カフカスと中央アジアで存在感を増しているのは? この地域の新たなパワーゲームについて解説したアニメーション動画の内容を一部紹介>

黒海とカスピ海に挟まれた南カフカス地方と、カスピ海の東側に広がる中央アジアで、新たな安全保障リスクと外交政策の大転換が起きている。

本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「ロシア不在で南カフカス、中央アジアに大転換...「ロシア後」の地政学を展望【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。

 
◇ ◇ ◇

アゼルバイジャンが隣国アルメニアとの係争地ナゴルノカラバフの重要な補給路を数カ月間遮断したことをきっかけに長年の対立が再燃した。この地をめぐる争いは、両国がソ連を構成する共和国だった時代から続いてきた。

nwyt231005_1.jpg

今もこの問題を複雑にしているのはロシアの存在だ。

ソ連の継承国ロシアは、この地域の盟主的な立場を維持したがっているが、必ずしも平和を守ることに関心はない。2020年の停戦後に2000人のロシア兵が平和維持部隊として派遣されたものの、アルメニアとアゼルバイジャン双方による停戦違反が止まらないのはそのためだ。

nwyt231005_2.jpg

アルメニアはロシア主導の集団安全保障条約機構(CSTO)の創設メンバーでありながら、ロシアに不満を募らせ、今年1月にCSTOの合同軍事演習を自国で開催しないことを表明。代わりに9月にアメリカとの合同軍事演習を実施した。

nwyt231005_3.jpg

これがただちに全面的なロシア離れを示唆するかと言えばそうではない。この地域の経済や安全保障、政治は複雑に絡み合っている。それでもロシアの影響力が低下していることは間違いない。

南カフカスでは今、アゼルバイジャンと親しいトルコや、アルメニアに好意的なイランなどの地域大国の存在感が増している。さらに、限定的ながらアメリカもこの地域の安全保障に関わるチャンスを得た。

また、アメリカは中央アジアでもプレゼンス拡大に乗り出している。

nwyt231005_5.jpg

経済的な競争が激しくなっている中央アジアだが、その中心には中国がいる。地理的にも近い中央アジアは、中国の広域経済圏構想「一帯一路」の要の1つに位置付けられ、中国はこの地域の石油やガスパイプラインや鉄道、道路などのインフラ整備に莫大な投資をしている。

政治や安全保障面でも関係を強化しているが、この地域がロシアの影響圏であることへの配慮は忘れていない。全保障はロシア、経済は中国という一種のすみ分けを確立している。

nwyt231005_6.jpg

中央アジアと南カフカスには、ロシアのウクライナ戦争を明確に支持する国は1つもないが、ロシアを孤立させようとする欧米諸国の試みにも加わっていない。

中央アジア諸国も、南カフカス地方の国々のように、最近の地政学的ダイナミクスを受けて外交関係の多角化に努めてきた。この地域に影響力の足がかりが乏しかったアメリカにとっては大きなチャンスだが、この動向は大国間の競争が急激に展開する危険も生む。

nwyt231005_10.jpg

中央アジアも南カフカスも伝統的にロシアとの関係が深く、両地域間のつながりが拡大していることから、南カフカスの情勢不安が中央アジアに飛び火する可能性もある。その逆もあり得る。

アメリカがこの地域への関与を深めるのであれば、こうした潜在的な安全保障上のリスクを戦略に織り込まなければならない。

nwyt231005_11.jpg

■詳しくは動画をご覧ください。

試写会
『クィア/Queer』 ニューズウィーク日本版独占試写会 45名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中