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処理水放出、なぜ中国だけが怒り狂う? 日本叩き「真の狙い」とは

Behind the Bashing

2023年9月5日(火)13時30分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)

共産党が利用する反日問題のほとんどは、党の支持者たちには関係がない。例えば党が好まない歴史観の教科書が日本で出版されたとか、日本の閣僚が靖国神社を参拝したとか、尖閣諸島付近の海域に侵入した中国漁船を海上自衛隊の艦船が追い払ったといったことは、彼らには遠い話だ。

このような問題に声を上げる反日デモ参加者は、何の不都合もなく純粋に満足感を得られる。だから「愛国的」になりすぎて日本がもたらす利益や有益な外交関係までも危うくしないため、党指導部はしばしば自制を求め、事態を収拾する必要に迫られる。

自発的行動と錯覚させる

しかし、共産党が目立たせたい対日問題で、潜在的なデモ参加者にデメリットをもたらすものもある。そのような場合、党は人々に騒ぎを起こす動機付けを与えるか、彼らをだまし、自発的に行動を起こしたかのように錯覚させる嘘をつかなければならない。

その例が福島原発の問題だ。中国共産党は、日本の岸田文雄首相の台湾主権に関する立場や自由で開かれたインド太平洋を重視する姿勢、日本政府の防衛関連予算の大幅増額が気に入らず、原発問題を利用して日本を苦しめたい。

しかし、共産党が中国国内で福島原発の話を思いどおりに展開させるには、放出された処理水は非常に有害であると主張しなければならない。そうなると、日本の水産物の輸入を全て止めるべきということになるし、日本の海鮮料理店の経営者たちや日本の海の幸を好む中国人は、たちまち不満になる。

しかし処理水放出に問題がないことはデータが明確に示している。だから今回、反日感情をたきつけるため、党は公然と事実を無視し、中国メディアから正しい情報を検閲するという手段に出た。非常に邪悪だが、「賢い」動きではある。

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