最新記事
動物

「ヒグマvsクロクマ」のレア対決...世界でも数少ない「共存」地域で起きた、子グマを守る母グマの戦い

U.S. Forest Service - Tongass National Forest

2023年8月6日(日)07時20分
パンドラ・デワン
アメリカのハイイログマ

写真はイメージです Gerald Corsi/iStock

<動画が撮影されたアラスカ州南東部アナンは、ヒグマとクロクマの両方が狭い地域に共存している世界でも数少ない場所の一つ>

米アラスカ州のトンガス国有林で、ヒグマとクロクマが一触即発の「にらみ合い」をする珍しい瞬間が撮影された。高い木の上にはクロクマの子どもがおり、母グマはその木の根元付近を歩きまわって、近づこうとするヒグマと対峙する。米農務省林野局トンガス国有林は、7月31日にこの動画を「ママがにらんでる!」というコメント付きで投稿した。

■【動画】米アラスカ州で撮影された、世界でも珍しいヒグマとクロクマの「対決」の瞬間

 
 
 
 
 

この動画が撮影されたのはアラスカ州南東部のアナンクリーク。ランゲルの町から約50キロメートル離れた場所だ。米林野局は「アナンは世界でもヒグマとクロクマの両方を見ることができる数少ない場所の一つだ」とコメントし、さらにこう続けた。「だからクロクマが木の上に隠れている子どもを守るためにブラウンベア(ヒグマ)を縄張りから追い出そうとする、このようなにらみ合いが起きる」

クロクマとヒグマがこのような比較的狭い地域で共存しているのは珍しい。通常は少ない食料をめぐって激しい競争が起きるため共存が難しいからだ。だがここは違う。アナンクリークはアラスカ南東部で最大級のカラフトマスの回遊域であり、ヒグマもクロクマも食料の調達には困らない。「このように食料が豊富なことから、異なる種同士の交流はその大半が非暴力的なものだ」と林野局は説明している。

ヒグマとクロクマに遭遇したら

ヒグマとクロクマは近縁種だが、幾つかのはっきりした違いがある。ヒグマの特徴は丸く盛り上がった背中、長くて湾曲した爪と筋の通った鼻梁だ。体はヒグマの方が大きく、四つん這いの姿勢で肩の高さが地面から約90~150センチ。米国立公園局によれば、クロクマがこのサイズまで大きくなることは滅多にないという。

クロクマは耳がより突き出ている傾向が強く、爪が短いためより効率的に木を登ることができる(ヒグマも木登りはできる)。

クマと遭遇した時のために、これらの種の違いを知っておくことは重要だ。国立公園局は、ヒグマに襲われた場合の最善の対処方法は「死んだふり」をすることだと言っている。腹ばいになって頭の後ろで両手をしっかりと組む姿勢だ。それでもクマが襲ってきた場合にのみ、反撃を試みるべきだという。

クロクマの場合はその逆で、決して死んだふりをしてはならない。まずは逃げることを考えるべきだが、それが無理な場合には、クロクマの顔と鼻口部を狙って攻撃しよう。

ヒグマやクロクマが人間を襲うことは滅多にない。それを覚えておくことは重要だが、それでもヒグマやクロクマからは適切な距離を取るようにしなければならない。


経営
「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑むウェルビーイング経営
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ハセット氏のFRB議長候補指名、トランプ氏周辺から

ビジネス

FRBミラン理事「物価は再び安定」、現行インフレは

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 6
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 7
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 8
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中