最新記事
ロシア

誰も驚かない「いかにも」なプリゴジンの最期...だからこそ「ワグネル・ブランド」は今後もアウトローを魅了し続ける

Branding Wagner after Prigozhin

2023年8月28日(月)13時40分
クララ・ブルーカルト(安全保障問題研究者)、コリン・クラーク(米スーファンセンター上級研究員)
プリゴジン

死亡する2日前にSNSで公開されたプリゴジンの姿 COURTESY PMC WAGNER VIA TELEGRAMーREUTERS

<「プリゴジン死してもワグネルは死なず」。反乱を企てた民間軍事会社トップが謎の墜落死、組織はプーチン体制内でどのように生き続けるのか>

死して屍(しかばね)、拾う者なし。

ロシアの野蛮な傭兵組織ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジンが死んだ。8月23日に搭乗していた小型ジェット機がロシア領内で墜落、炎上したとされるが詳細は不明。ある意味、「いかにも」な最期だった。

同乗していた複数のワグネル幹部も巻き添えになった。状況はまだ謎に包まれているが、ロシア大統領ウラジーミル・プーチンの指示した暗殺であることはほぼ間違いない。

プリゴジンが無謀な反乱を起こし、プーチンに恥をかかせたのはちょうど2カ月前の6月23日。ただで済むわけはなく、消されるのは時間の問題だった。自分に背く者は消す。それがプーチン流だ。

マフィアさながらの凄惨かつ残酷な手口だが、これが自分に歯向かう者の運命だという見せしめとしては効果的だ。しかしそれは、プリゴジンが一代で築き上げたワグネルの「ブランド」にふさわしい死に方でもあった。

そう、ワグネルという高級武装ブランドには過剰な暴力がよく似合う。2019年にロシアのSNSで拡散された動画には、シリアでワグネル所属のロシア人傭兵が現地の男性を大型ハンマーで殺害する姿があった。

昨年11月には、ワグネルの脱走兵とされる人物がハンマーで頭をたたき割られる動画が出た。このときプリゴジンは、このビデオには「犬は犬死にする」という題を付けようと提案している。

その後、この大型ハンマーはワグネルの理不尽な残虐性の象徴となった。欧州議会がロシアを「テロ支援国家」と認定し、ワグネルをその先兵と位置付けたときは、欧州議員たちに血のりのような塗料の付いたハンマーを送り付けている。

流血の蛮行を賛美する

8月24日にはサンクトペテルブルクにあるワグネル本部の前に、プリゴジンらを追悼する祭壇が設けられた。SNSに投稿された画像を見ると、山と積まれた花束の上に巨大なハンマーが鎮座していた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中