プーチンによる「ソ連崩壊の悲劇と自己犠牲の大切さ」が1冊に ロシア、初の国定歴史教科書導入へ
ウクライナ侵攻後にロシア国内の引き締め強化を進めるプーチン大統領の下で、ついに初めての全国統一歴史教科書が導入された(2023年 ロイター/Shamil Zhumatov)
ウクライナ侵攻後にロシア国内の引き締め強化を進めるプーチン大統領の下で、ついに初めての全国統一歴史教科書が導入された。
9月の新学期から16―18歳の学生向けに使用される国定教科書をメジンスキー大統領補佐官がお披露目。そこにはソ連崩壊からプーチン氏統治時代、ウクライナ侵攻の原因に至るまで、完璧なまでにプーチン氏の歴史観と政権が用いている解釈が映し出されている。
つまり超大国になったソ連に対する誇りや、その崩壊を巡る憤りと屈辱、1999年末から始まったプーチン氏治下でのロシアの「再生」といった考え方だ。
ロシア側が「特別軍事作戦」と呼ぶウクライナ侵攻について、国定教科書ではプーチン氏が掲げる開戦の大義に重点が置かれた。また、冷戦終結後にせっかく差し伸べた友好の手を振り払った西側に対するプーチン氏の幻滅もにじみ出ており「西側諸国はロシア国内を不安定化させようと手を組んだ。その目的がロシアを分割し、天然資源を支配しようとしているのは明らかだ」と記されている。
プーチン政権がこの教科書を通じて学生に理解させようとしているのは、ソ連崩壊の悲劇性と西側の背信行為、そして偉大な母国ロシアに捧げる自己犠牲の大切さだ。
プロパガンダ
国定教科書は西側の「仕打ち」を列挙。北大西洋条約機構(NATO)がそうしないとの約束を破って東方拡大を続けていることや、ロシア人が迫害される事態を無視していること、ロシア恐怖症を拡散させていること、ジョージアとウクライナに「カラー革命」を起こして旧エリート層を一掃したことなどを指摘した。
西側の指導者やロシアの反体制派はもちろん、ロシアの一部歴史家さえ、このような見方を否定し、ウクライナ戦争はロシアの弱点を露呈し、国家としてのウクライナのナショナリズムを確立した戦略的な大失敗であると批判している。
ウクライナ侵攻後にロシアを去ったロシア人の歴史教師ミハイル・コピツァ氏は、教科書について「これは教科書ではなくプロパガンダだ」とロイターに語った。
現在、モンテネグロの学校で教えている同氏に、この教科書はロシアの強さと弱さのどちらを表しているのかを聞くと、両方だと答えた。
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