最新記事
ウクライナ情勢

子供の人形にも!反転攻勢の勢いを鈍らすロシア軍のブービートラップ

Videos Show Russian Boobytraps Left in Trees, Toys, Trenches

2023年7月24日(月)22時59分
デービッド・ブレナン

ウクライナ軍が南部ヘルソン州を奪還した後の市立図書館。大量のブービートラップが残されていた(2022年11月28日) Anna Voitenko−REUTERS

<ウクライナ軍の反転攻勢が予想より遅いのは、ロシア軍が「撤退土産」敷設していく地雷やブービートラップが進軍の脅威になっているからだ>

ロシアに反転攻勢を仕掛けるウクライナ軍を最も苦しめているのは、広大な地雷原と、ロシア軍が撤退するときに必ず仕掛けていくブービートラップだ。そのためにウクライナ軍は、ウクライナ政府や外国の当局者が期待するよりゆっくりと、慎重に進まざるを得なくなっている。

ここ数週間、ウクライナに仕掛けられた地雷とブービートラップの危険性を示す戦場の動画が大量に流されている。ロシア軍はウクライナ軍の前進を妨げ、損傷を与えるためにあらゆる手段を用いている。

ロシア軍は、数カ月かけて塹壕や対人・対車用地雷が埋まった地雷原のネットワークを構築してきた。西側からウクライナに供給された新しい装甲車でさえ、ウクライナ南部と東部に広がる地雷原の犠牲になっている。

「ロシア軍には撤退する前に、一帯に地雷を敷き詰め、ウクライナ軍に罠を仕掛ける時間があったのは明らかだ」と国務省のマシュー・ミラー報道官は7月24日のブリーフィングで、現在の反攻の状況について記者団に語った。

ブービートラップの使用は今に始まったことではない。ロシア軍がウクライナに本格侵攻した2022年2月以降、ロシア軍が撤退した跡にはほぼ例外なく、発見とともに爆発する爆破装置、すなわちブービートラップが仕掛けられている。

洗濯機やおもちゃにも

ウクライナ当局によれば、手榴弾やその他のブービートラップは、洗濯機、車、子供のおもちゃ、ロシア兵の死体にさえ取り付けられていたという。

ウクライナのオレクシー・レズニコフ国防相国防相によれば、集団墓地にもブービートラップが仕掛けられていた。未確認情報ではあるが、蝶のような形をしたロシア製PEM対人地雷、通称「バタフライ地雷」が生きたハリネズミに取り付けられていたという報告もある。

ロシアの政治アナリストで、マサチューセッツ州にあるフレッチャー法律外交大学院の客員研究員パベル・ルジンは、「このやり方はアフガン戦争やチェチェン戦争から、特にチェチェン戦争から派生したものだ」と本誌に語った。

つまり、ウクライナで進行中の戦争は、「さまざまな手段を駆使する非正規戦や、相手との違いを活用する非対称戦の要素が強くなっている」。

最前線で撮られた最近の映像は、ロシア兵が撤退した後の塹壕を、ウクライナ軍兵士が占拠するところを捉えている。塹壕のなかには爆発物が散乱しており、「いたるところに罠が仕掛けられているから、急いではいけない」とウクライナ軍兵士ロマン・トロキメッツはツイッターに書いた。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中