最新記事
クリミア半島

クリミア大橋を破壊したとされる「水上ドローン」とは? ウクライナは「攻撃用無人舟艇」の開発に成功したのか?

What are the aquatic drones reportedly behind strike on Crimea Bridge?

2023年7月18日(火)19時24分
エリー・クック

ウクライナ軍が水上ドローンで橋を攻撃した疑いについて、詳細はほとんど確認されていないが、軍事専門家のデービッド・ハンブリングによれば、ウクライナ側はこれまでロシア軍を攻撃するのに複数種類の水上ドローンを使用してきた。シンクタンク「米海軍分析センター」のサミュエル・ベンデットは、現時点では水上ドローンについて、専門家でもその外見さえよく分かっていないと話した。

ロシアはこれまで、ウクライナ軍がセバストポリにあるロシア黒海艦隊の基地をはじめ、クリミア半島にあるロシアの複数の軍事基地を水上ドローンで攻撃したと繰り返し主張。16日には、セバストポリでウクライナの無人航空機7機と水上ドローン2機による攻撃を「阻止した」と明らかにした。

 
 
 
 

ハンブリングは17日に本誌に対し、ウクライナが過去に使用した水上ドローンは全長6メートル未満で、最高速度は時速約80キロメートルだったと述べた。

安価な使い捨て攻撃舟艇

約180キログラムの爆発物を積んだこれらの水上ドローンは、橋のような大きな構造物の攻撃に一般に使われる兵器よりも破壊力は小さいと彼は指摘。しかしそれでも「大きな損傷をもたらす」ことは可能だし、より大型の無人艇が使われたが検知されなかった可能性もあるとハンブリングは述べた。またベンデットは本誌に対し、クリミア大橋にはセンサーやカメラが取り付けられているが、周囲の海や空を監視することは難しいと説明した。

ウクライナ側は比較的安価な無人艇を使うことで、ロシアの作戦に大きな混乱をもたらすことができるとベンデットは指摘。ウクライナは「安価で使い捨てが可能な攻撃用舟艇」をつくり出すことに成功したと述べた。

専門家は、ウクライナが攻撃に使用した水上ドローンは小型で水面ぎりぎりを進むため、ロシア軍が目視あるいはレーダーやソナーで検知するのは非常に難しいと指摘する。水上ドローンは「標的のすぐ近くに到達するまで、波に隠れてよく見えない」可能性があるとハンブリングは言う。

西イングランド大学のスティーブ・ライト上級研究員(航空学)は17日に本誌に対し、レーダーなどのシステムは、そのような小型の無人機を検知するようにできていないと説明した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トランプ政権、肥満治療薬を試験的に公的医療保険の対

ビジネス

パウエル氏利下げ拒否なら理事会が主導権を、トランプ

ビジネス

ダイムラー・トラック、米関税で数億ユーロの損失計上

ワールド

カンボジア、トランプ氏をノーベル平和賞に推薦へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 8
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中