最新記事
歴史

「脳は200ドル、頭部は1000ドル」...「墓泥棒」と医学部の切っても切れない「歴史的関係」

Bodies Up for Grabs

2023年7月14日(金)15時30分
アディセン・バウアー

墓荒らしによって解剖学の材料にされた遺体は、生きているときから疎外された集団に属している人々であることが多かった。すなわち、黒人や先住民、セックスワーカー、有罪判決を受けた人、移民などだ。

死後に墓を荒らされた人の多くは地元に家族がいなかったり、遺体を守ってくれるような「霊廟や豪華な墓」を建てるカネがなかった人だと、歴史家たちは指摘する。

 
 

もっとも、こうした歴史と今回のハーバード大学の件には重要な違いがある。悪意に満ちた大学職員たちに盗まれた遺体は、遺族から大学に寄贈された後に盗まれたのだ。

この盗難は現代の小さな闇市場の一部分であって、医学教育システムの基盤を成すものではない。

現在、アメリカでは推定で毎年2万体が医学のために献体されており、これが大学医学部の遺体安置所を支えている。

ただしリースによれば、人々が研究や教育のために献体をするようになったのは19世紀末~20世紀初頭以降のことだ。

今回のような現代の墓泥棒は、陰惨なものに対する人間の強い興味を満たすためでもあるだろう。

それでも遺体盗掘の長い歴史と根底のところでよく似ていると、ジェンダー、セクシュアリティー、人種を研究する歴史学者のキャスリーン・ブラウンは言う。

「誰にも愛されていない遺体の部位は商品になり得る、好きなようにして構わないと、都合よく考える人もいる」

©2023 The Slate Group

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「停戦は発効」、違反でイラン以上にイスラ

ワールド

ガザの食料「兵器化」、戦争犯罪に該当 国連が主張

ワールド

ドイツ、25年度予算案を閣議了承 投資と利払い急増

ビジネス

独IFO業況指数、6月は予想以上に上昇 景気底入れ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中