最新記事
プリゴジン

ワグネル創設者プリゴジンはなぜ今もロシアで自由の身なのか?

Why Prigozhin Is Still a Free Man

2023年7月10日(月)18時14分
イザベル・ファン・ブリューゲン

武装反乱でワグネルが制圧したロシア軍南部軍管区司令部の幹部たちと話すプリゴジン(中央)(2023年6月24日、ロシア南部ロストフで)Video Obtained by REUTERS.

<反乱を起こしたプリゴジンがロシアに戻っているという情報にロシア政府が表向き興味を示さないのは、プーチン政権が窮地に陥っているからだ>

【写真】札束、金塊、クローゼットに並ぶ意外なもの...プリゴジン邸で撮影されたもの

民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジンは反乱を起こした後も、ロシアで自由に活動しているようだ。そうだとすれば、彼は今もなんらかの「安全を保障される」取り決めによって保護されている可能性があると、アメリカのシンクタンクである戦争研究所(ISW)が指摘した。

ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は突然、自分が仲介したロシアとの取り決めによってベラルーシに避難したはずのプリゴジンが、実はロシアにいると発表した。ISWはウクライナ紛争に関する最新の分析の中で、このことを重く見ている。

「今朝の時点で、ワグネルの戦闘員たちは、バフムトから撤退した後に移動した宿営地に留まっている」と、ルカシェンコは6日の会見で語った。「エフゲニー・プリゴジンはサンクトペテルブルグにいる。あるいは今朝、モスクワに飛んだかもしれないし、他の場所にいるかもしれない。とにかく、ベラルーシにはいない」

詳細はまだ不明だが、反乱を終結させた6月下旬の取り決めでは、プリゴジンとワグネルの戦闘員に対する告発は取り下げられ、ロシア国防省の傘下に入りたくない戦闘員とプリゴジンはベラルーシに行くことになっていた。

ロシア政府は無関心のふり

ワグネルの代表がロシアにいるとなれば、いくつかの疑問が生じる。モスクワに進軍しようとした反乱の罪を、プーチンは見逃したのか。プリゴジンが合意の条件を守っているかどうかをロシア政府が懸念していないように見えるのはなぜか。

ルカシェンコが声明を出した後、プリゴジンの居場所について問われたロシアのドミトリー・ペスコフ報道官は質問を一蹴し、ロシア政府にはプリゴジンの動向を追跡する「能力」はないし、「願望」もないと述べた。

ISWは、プリゴジンがロシアで自由に活動できるのは、彼が今も 「何らかの安全保障によって守られているか、ロシア政府がプリゴジンを物理的あるいは法的な標的にするよりも、ロシアでの彼の評判を落とすことを優先し続けているかのどちらか」であると報告している。

反乱が終わって以来、プリゴジンは公の場に姿を現していないが、親プーチン派のメディアは7月6日、ロシアの治安当局がサンクトペテルブルクのプリゴジンの邸宅を家宅捜索した際に撮影されたとされる画像を公開した。そこには、金の延べ棒、武器、現金、そして大量のかつらが写っていた。

試写会
『クィア/Queer』 ニューズウィーク日本版独占試写会 45名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル、シリア大統領官邸付近を攻撃 少数派保護

ワールド

ライアンエア、米関税で航空機価格上昇ならボーイング

ワールド

米、複数ウイルス株対応の万能型ワクチン開発へ

ワールド

ジャクソン米最高裁判事、トランプ大統領の裁判官攻撃
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中