最新記事

注目ニュースを動画で解説

「最下層は性奴隷」受刑者は4階級に分類される──戦場、ロシア国内に染み出す「刑務所の掟」とは【注目ニュースを動画で解説】

2023年6月21日(水)18時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ロシア刑務所の掟

Newsweek Japan-YouTube

<戦場やロシア国内に蔓延し始めた刑務所文化、独自の「カースト制度」について解説したアニメーション動画の内容を一部紹介する>

ワグネルの囚人部隊を支配する独自の規律、裏社会の論理を知ることなしにロシアと戦争の本質を理解することはできない。

戦闘員の日常と戦争の在り方に大きな影響を及ぼし始めている「刑務所の掟」とは──。

本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「「最下層は不可触民で性奴隷」受刑者を4階級に分類するロシア刑務所の掟 戦場、ロシア国内にも蔓延【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。

◇ ◇ ◇

エフゲニー・プリゴジン率いる民間軍事会社「ワグネル」は、ロシア軍の戦闘員不足を穴埋めするため、刑務所に収監された受刑者の中から人員を集めてきた。受刑者は戦闘に参加することと引き換えに、任務終了後には自由が約束される。

この動きによって刑務所の文化がロシア軍、さらには国内に大きな影響を及ぼし始めている。

nwyt0621_2.jpg

4月9日、プリゴジンは政府の戦闘員たちへの扱いを次のように厳しく批判した。

「(身分の低い受刑者たちが)一般の受刑者たちと一緒に肩を並べて戦っているという噂が聞こえてくる。こうしたことは(刑務所の)掟、いわば不文律に真っ向から反する」

意味不明に思えるクレームだが、一体どういうことなのか。

nwyt0621_12.jpg

ロシアの社会で犯罪者たちの慣習や規範が強い影響力を持つのは、最近始まったことではない。

帝政ロシアの時代に端を発し、主に旧ソ連時代の刑務所や収容所で形づくられてきた「パニャーチエ」(直訳すると「概念」といった意味)と呼ばれる暗黙の掟がこの文化の核を成す。

この掟の下、受刑者が取るべき行動やさまざまな禁止行為、違反者への厳しい罰則、そして刑務所内の身分制度などがルール化されている。

nwyt0621_4.jpg

受刑者は大まかに4つの階級に分類され、それぞれ「盗賊」「男」「雄ヤギ」「雄鶏」という隠語で呼ばれている。

「盗賊」は受刑者の中の権力者で、刑務所の掟はこの層の利害に沿うものとなっている。

「男」は大きなトラブルなしに刑期を終えたいと思っている者たちで、刑務所の掟を尊重する。刑務所の管理者側に協力することはない。

「雄ヤギ」は管理者たちに協力するが、刑務所の暗黙の掟も尊重して行動する。刑務所内のヤミ商人として品物を調達する者もこの階級に属す。

そして最下層が「雄鶏」だ。

nwyt0621_5.jpg

雄鶏たちは便器の掃除や他の受刑者の下着洗いなど刑務所内で誰もが嫌がる仕事を押し付けられ、ときには性奴隷としても扱われる。

他の階級の受刑者たちはレイプや暴力以外で雄鶏と接触すべきではないとされ、触れた途端にその人物もこの階級に転落するという。

雄鶏たちの立場はあまりに悲惨で、自殺に追い込まれる者も多い。

nwyt0621_7.jpg

たとえ国のために戦っても刑務所カーストから解放されることはない、とプリゴジンは述べている。最上位カーストの受刑者にとって軍隊内の上官に服従するのもタブーだ。死者への敬意もなければ戦闘員同士で絆を結ぶこともない。

当然、これで優秀な部隊ができるはずがない。

nwyt0621_9.jpg

契約期間を終えた元受刑者らが故郷に戻ることで刑務所文化はロシア国内にも広がり、悪しき影響をもたらしている。元ワグネル戦闘員による犯罪も増えて無法地帯と化しつつあり、ロシアの野党政治家らは「暴力の時代」である1990年代の再来だと危機感を募らせている。

nwyt0621_10.jpg

ウラジーミル・プーチン大統領は裏社会の掟についてはっきり触れるのは避けつつ、これを固く守っている印象もある。マッチョな行動や性的な純潔を尊ぶといったプーチンが掲げるロシアの伝統的価値観にも掟の影響がうかがえる。

nwyt0621_11.jpg

■詳しくは動画をご覧ください。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン大統領ヘリ墜落、原因は不明 「米国は関与せず

ワールド

ICC、ネタニヤフ氏とハマス幹部の逮捕状請求 米な

ビジネス

FRB副議長、インフレ低下持続か「判断は尚早」 慎

ワールド

英裁判所、アサンジ被告の不服申し立て認める 米への
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 5

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 6

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中