最新記事
ウクライナ情勢

ウクライナが手に入れた英「ストームシャドウ」ミサイルの実力は?

Ukraine's New 'Storm Shadow' Missile's Range, Power Compared to HIMARS

2023年5月15日(月)17時25分
エリー・クック

長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」を搭載した軍用機 skynews/YouTube

<イギリスがウクライナに供与を開始した長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」は、ロシア軍にとってHIMARSハイマースを上回る深刻な脅威>

ウクライナは遂に長射程のミサイルを獲得した。

【動画】ストームシャドウによるとみられる爆撃跡(ルハンスク)

5月11日、イギリスはストームシャドウをウクライナに提供することを英議会下院で発表した。イギリスのベン・ウォレス国防長官は、長距離ミサイルは「現在ウクライナに向けて搬送中で、すでに到着しているかもしれない」と述べた。

230515stormshadow2.png
ストームシャドウ・ミサイル  skynews/YouTube

だがウクライナに何個ミサイルを提供したかについては明言しなかった。

ウォレスはさらに「ロシアは、このようなミサイルがウクライナに提供されるに至ったのはひとえに自らの責任であることを認識するべきだ」と述べた。イギリスは以前から、より射程の長い兵器を提供する意思があることを示唆していた。

その後、クリミア併合地域への大統領特使を務めるロシアの政治家ゲオルギー・ムラドフは、ウクライナに長距離攻撃能力を与えたことから、イギリスの国土は「壊滅的に破壊される」可能性がある、とロシア国営メディアに語った。

イギリスの発表に先立ち、ロシアのドミトリー・ペスコフ報道官は、ストームシャドウ・ミサイルが供与されれば、「ロシアの軍隊は適切な対応が必要になる」と述べていた。

早速ルハンスク攻撃に使用

イギリス政府は、供与した長距離巡航ミサイルが民間人を標的にすることはないと声明を出したが、ロシア国防省は13日、長距離巡航ミサイルが12日にウクライナ東部の都市ルハンスクの標的を攻撃するために使用されたと発表した。

ルハンスクは、ロシアが2022年9月に一方的に併合したウクライナの紛争地ドンバス地域の都市。ロシアによる併合の宣言は、国際社会から認められていない。

ロシア国営メディアによると、ロシア国防省のイーゴリ・コナシェンコフ報道官は、ストームシャドウを発射したウクライナ軍のスホーイ24ジェット機と援護していたミグ29戦闘機は、ロシア軍によって撃墜されたと述べた。

ワシントンのシンクタンク戦争研究所は13日、この報道は「ロシアの兵站を狙うウクライナの潜在能力に対するロシアの不安の高まり」を呼び起こしたと述べた。だが、ウクライナ領内のロシア軍に対してウクライナ軍がストームシャドウ・ミサイルを使用した証拠はまだ確認されていない、と同研究所は述べている。

ウクライナを支援する西側同盟国は、ロシア領内への攻撃が可能になるほど射程の長い兵器の提供をためらってきた。

アメリカは高機動ロケット砲システム(HIMARS)、射程を延長したJDAM(統合直接攻撃弾)誘導装置、GLSDB(地上発射小径爆弾)などの武器を提供してきたが、これらは空から発射されるストームシャドウ・ミサイルに比べると射程距離が短い。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請件数、1.6万件減の19.9万件

ワールド

中国、来年は積極的なマクロ政策推進 習氏表明 25

ワールド

ロ、大統領公邸「攻撃」の映像公開 ウクライナのねつ

ビジネス

中国、来年は積極的なマクロ政策推進 習氏表明 25
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 5
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中