最新記事
中国

「南進」を始めた中国の隠せない野心──本格的な海外基地の展開をにらむ...長期戦略をひもとく

INTO THE SOUTH PACIFIC

2023年3月10日(金)13時30分
ディディ・カーステンタトロー(ジャーナリスト)
戦艦

Krzysztof Pazdalski-Shutterstock

<外交攻勢と経済援助で狙うのはシーレーンの要衝>

昨年12月、中国の在バヌアツ大使館はいつになく忙しかった。太平洋のこの小さな島国が、アメリカの同盟国であるオーストラリアと安全保障協定を結んだのだ。

協定が調印された12月13日から3日間、中国の李名剛(リー・ミンカン)大使は首都ポートビラにある壮大な中国大使館など3カ所でイベントを主催。中国が援助やインフラ整備でこの地域に広く関与していることや、アメリカが大使館を置いていないバヌアツと中国が40年にわたり外交関係を築いてきたことを強調した。

中国政府のメッセージは明確だった。中国は長年ここにいて、贈り物を続けているではないか──。

李は14日のイベントで、中国はバヌアツと「戦略的な連携を前進させるために」協力する用意があると語りかけた。大使館によると、この日は政府高官ら約200人が中国の珍味を楽しみ、書道を体験した。

バヌアツのアラトイ・イシュマエル・カルサカウ首相が、オーストラリアとの安全保障協定に署名した翌日に、中国式マッサージを受けている写真が在バヌアツ中国大使館のサイトに掲載された。カルサカウはかつて、前任者と中国の良好な関係を批判していた。

李の奮闘ぶりは、米中の競争が激化している南太平洋地域で、中国が経済的・政治的影響力を追求していることをあらためて物語る。この地域には世界貿易にとって重要なシーレーンがある。グローバルな通信を担う海底ケーブルが横断し、優れた港や飛行場を提供する島々が点在しており、どの国の軍隊にとっても戦略的に重要な地域になり得る。

南太平洋地域の人々の心をつかみ、経済的に優位に立とうとする中国の外交攻勢は、世界各地で影響力を高めようという広範な戦略の一部にすぎない。ただし、そこには将来、中国の軍事拠点になり得るネットワーク構築も含まれている。

アメリカとその同盟国は中国の外交攻勢について、本当の目的は国外に軍事拠点を構えることではないかと懸念している。人民解放軍が全面的に運営する基地を置くか、表向きは外国政府との警備の協定になるかもしれない。経済特区に隣接していて人民解放軍をいつでも受け入れられる港湾施設や滑走路かもしれないし、商業衛星の監視や気象観測所などの軍民共用も考えられる。

こうした施設は、今のところほかのどの国よりもはるかに大規模な国外基地網を擁するアメリカにしかできない。実現すれば、中国が軍事力を誇示するのに役立つだろう。

中国が国外の軍事基地を見据えているという指摘は「誤った非難」で悪意のある臆測だと、昨年6月に中国外務省の趙立堅(チャオ・リーチエン)副報道局長(当時)は反論しているが。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

クレディ・アグリコル、第4四半期は39%減益 一時

ビジネス

日経平均は反落、一時700円超安 急騰後の利益確定

ワールド

タイ主要経済団体、26年成長率予想を1.6─2.0

ビジネス

GSユアサ、通期純利益と年間配当予想を上方修正 市
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 4
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 9
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 10
    ICE射殺事件で見えたトランプ政権の「ほころび」――ア…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 8
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 9
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 10
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中