最新記事

ウクライナ戦争

プーチンが語り始めた「ロシア崩壊」の脅しは核より怖い?

Russia's Collapse Now Considered Plausible by Putin—Ex-Zelensky Adviser

2023年3月2日(木)16時30分
ブレンダン・コール

ナチスドイツの攻撃を受けたスターリングラード(1942年、写真はイメージです) Everett Collection-shutterstock

<11の時差にまたがる広大な領土が政治的な空白地帯になると、キッシンジャーも警告>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はここ数カ月、前任者のドミトリー・メドベージェフとロシア連邦の崩壊について話し合ってきたと、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の元顧問が語った。

ゼレンスキーの元顧問、オレクシイ・アレストビッチは2月27日、ロシアの弁護士・元反体制派政治家のマルク・フェイギンが運営するYouTubeチャンネル「フェイギン・ライブ」のインタビューで、ウクライナの最新の戦況について聞かれ、ロシアは全面的な敗北も視野に入れていると述べた。

その証拠として挙げたのが、メドベージェフとプーチンの最近の発言だ。現在はロシアの安全保障会議の副議長を務めるメドベージェフは、メッセージアプリのテレグラムで核の脅しをちらつかせ、ウクライナ戦争はNATOとロシアの代理戦争だと主張してきた。

2月27日付のロシアの新聞・イズベスチヤに寄稿した論説で、メドベージェフは旧ソ連の崩壊を古代ローマやオスマントルコの滅亡にたとえ、「大国が滅びれば、戦争が起きる」と述べ、ロシアの崩壊も大混乱を引き起こすと論じた。「帝国が滅びれば、世界の半分がその瓦礫に埋もれることは歴史が証明している......ロシアが存続するかどうかは、前線の決着で決まることではない。人類全体の文明の存続を考えるなら、答えははっきりしている。われわれはロシアなき世界を必要としていない」

崩壊に伴う大混乱に備えが必要

プーチンも26日にロシアの国営テレビで世界の終末を予言するような脅迫じみた発言をした。西側との対決はロシアの国家と国民の存続を懸けた実存的な戦いであり、この戦いではNATOの核戦力を考慮に入れなければならない、と述べたのだ。

「NATOの目的はただ1つ。ソビエト連邦に続き、その主体であるロシア連邦を解体することだ」

ウクライナを支援する西側主要国はウクライナ勝利のシナリオを検討する中で、戦争の結果としてロシア連邦が崩壊する可能性についても意見を交わしてきた。エマニュエル・マクロン仏大統領はプーチンに「屈辱を与えてはならない」と述べ、外交的な解決の余地を残すべきだと主張してきた。最近ではロシアの「敗北は望むが、崩壊は望まない」とも述べている。

ヘンリー・キッシンジャー米元国務長官は昨年12月、英誌スペクテーターに寄せた論説で、「ロシアが解体されるか戦略的政策の遂行能力が破壊されたら、11の時差にまたがる広大な領土が統治の空白状態に陥ることになる」と警鐘を鳴らした。

ウクライナの国家安全保障防衛会議のオレクシー・ダニーロフ長官も最近、西側は依然として停戦に向けた落とし所を決めかねているが、そろそろ世界はロシアの崩壊に備える必要があると警告を発した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

仏総合PMI、9月は5カ月ぶり低水準 製造・サービ

ビジネス

独総合PMI、9月速報は1年4カ月ぶり高水準 サー

ワールド

インド総合PMI、9月は61.9に低下 予想も下回

ビジネス

アングル:Z世代が変える高級ブランド市場、グッチな
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがたどり着ける「究極の筋トレ」とは?
  • 3
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 7
    「より良い明日」の実現に向けて、スモークレスな世…
  • 8
    米専門職向け「H-1B」ビザ「手数料1500万円」の新大…
  • 9
    「汚い」「失礼すぎる」飛行機で昼寝から目覚めた女…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「コメの消費量」が多い国は…
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 3
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 4
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 5
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で…
  • 6
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 7
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 8
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中