最新記事

ハイチ

摘発すべきはギャングとエリート──国家を食い物にしてハイチを「崩壊国家」に追い込む悪い奴らの実態

HAITI’S HOMEGROWN ILLS

2023年3月2日(木)15時02分
ロバート・マガー(政治学者)

230307p50_HIC_03.jpg

ギャングの暴力、コレラ、飢餓が人々を苦しめ、昨秋には首都で大規模なデモが起きた GEORGES HARRY ROUZIERーANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES

それらの緊急支援に続いて警察官の募集と訓練教育の支援、地域ぐるみの防犯体制の構築や刑法改正、さらにエリートが犯罪集団と手を組む現状を打破するには汚職一掃や透明性確保のための支援も必要になる。

武器と麻薬の密輸対策では、カリブ共同体や米州機構などの組織が地域的な捜査協力の枠組みづくりを進めれば、情報共有や技術支援などで大きな成果が期待できる。

とはいえ、ハイチが国家破綻の危機を克服するには、まともな統治と言わないまでも、せめてそれに近いものを復活させることが不可欠だ。現時点では、ハイチには民主的な選挙で選ばれた公職者は一人もいない。大統領暗殺事件後、首相に就任したアリエル・アンリは秩序回復のために選挙を行うと約束した。

だがこの約束はいまだ実現していない。2月に暫定選挙管理委員会が発足したが、年内に選挙が実施される見込みは薄い。仮に選挙が行われたとしても、ギャングが支持する候補に入れなければ殺されかねない状況ではいったい何人が投票所に足を運ぶだろう。

重武装したギャングが相手では秩序回復は困難を極める。最終的にはハイチの人々が主体にならなければ長期的な問題解決は望めないが、それに道筋を付けるためにも国際社会の支援が不可欠だ。

ハイチのエリートに「腐れ縁」を断つよう圧力をかけなければ、悪の集団はのさばり続ける。彼らの懐に流れ込む潤沢な資金を断つこと。それが先決だ。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中国防相が会談、ヘグセス氏「国益を断固守る」 対

ビジネス

東エレク、通期純利益見通しを上方修正 期初予想には

ワールド

与野党、ガソリン暫定税率の年末廃止で合意=官房長官

ワールド

米台貿易協議に進展、台湾側がAPECでの当局者会談
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中