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2人の人生を分けたもの──「性的対象」だったブルック・シールズとパメラ・アンダーソン

Another Wake-Up Call

2023年2月15日(水)16時12分
キャット・カーデナス

2つの裁判は(それが行われた時期には16年近い差があるのだが)、いずれもこの世界で女として生きることの難しさを浮き彫りにしている。2人とも、女であるがゆえに年齢に関係なく商品化され、主体性を奪われ、問題が起きても結局は自業自得だと決め付けられた。

その一方で、2人の周囲にいた男たちは誤った行為に対する責任を問われることなく逃げおおせた。シールズは裁判に負け、アンダーソンも諦めた。

だがアンダーソンとシールズの共通点はそこまでだ。アンダーソンはその後も、彼女の身に起きたことについて自業自得だと責められ続けた。一方のシールズは結婚、出産という人生の節目を経たこともプラスに働き、世間の尊敬を集め得るマドンナ(聖母)に変身できた。

シールズとアンダーソンが今も健在で、こうして過去を振り返ることができるという単純な事実が、筆者には奇跡のように感じられた。2人はいずれも世間の目にさらされながら、何十年にも及ぶハラスメントや世間の態度の変化に振り回されてきた。

シールズの人生は困難だったが、今は希望がある。一方でアンダーソンの物語は、私たちに改めて厳しい現実を突き付ける。どんなに時代が変わったといっても、この社会はまだ性差別の解消には程遠いという現実を。

映像の中で、アンダーソンはこう言っている。「みんなが私の体よりも中身に興味を持ってくれることを、私はずっと望んでいた」

きっといつか、その日が来ると信じたい。

©2023 The Slate Group

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