最新記事

ウクライナ戦争

ロシア兵の遺族に「毛皮をプレゼント」も、お礼の動画撮影が終わった途端に取り上げる

Wives of Dead Russian Soldiers Up In Arms As Fur Coat Gifts Taken Back

2023年2月12日(日)20時00分
ブレンダン・コール
毛皮をプレゼントされたロシアの女性たち

@redundanton/Twitter

<カメラの前で「ありがとう」と言わされた女性たちだが、撮影が終わるとすぐに毛皮のコートを返却させられてしまった>

ウクライナでの戦闘で死亡したロシア兵の妻らに、補償として毛皮のコートがプレゼントされた。妻たちはプレゼントの関係者が撮影するカメラの前で感謝を述べるが、なんとその直後にコートを返却させられてしまった。

■【動画】いかにもな「言わされてる」感...コートを手に感謝を述べる女性たち

ロシアのソーシャルメディア上で拡散しているその映像を見ると、ロシア占領下にあるウクライナのドネツク州マケエフカで、女性たちが毛皮のコートを手に掲げ持っている。「心から感謝します」と1人の女性が言うと、女性たちが一斉に「ありがとう」と述べた。

映像を撮影したのは、2014年にウクライア・ドンバス地方で親ロシア派武装勢力を率いた著名な軍事ブロガー、イーゴリ・ギルキンと親交のあるエフゲニー・スクリプニクとされる。

スクリプニクは映像の中で、女性たちに向かって「こうした状況で、私たちが1つの家族だと感じているでしょう」と声を掛けた。コートは、毛皮製品メーカーとギルキンの妻が提供したとされていた。

撮影終了後すぐにコートを取り上げられた

ところが、ウクライナ侵攻に反対するロシア団体「フェミニスト反戦抵抗運動」が、映像に映っていた女性の1人に連絡を取ったところ、彼女を含む4人が撮影終了後すぐにコートを取り上げられたと明かした。

同団体のテレグラムチャンネルの投稿によると、女性たちは当初、毛皮のコートは品質が悪いと伝えられ、新しいコートを提供するという約束で一度もらったコートを返却。だがその後、「手違いがあり、コートは他の人たちのためのものだった」と告げられたという。

さらに問題はそれだけではなく、団体が接触した女性が言うには、政府からの贈答品と引き換えに動画制作への参加を求められたのは今回が初めてではないという。

「モスクワから何か持ってきてくれ、動画を撮影するのはよくあることで、私たちはいつもとても感謝している」と女性は話している。つまりこうした映像は、そもそも捏造された「やらせ」である可能性が高いということだ。団体は、動画に登場した女性の中に本物の未亡人が何人いるかは「不明」だとしている。

ウクライナ内務大臣顧問アントン・ゲラシチェンコは、ロシア兵の未亡人にコートが提供された話についてTwitterで取り上げていたが、9日に「進展があった」と投稿した。「未亡人の1人は、撮影後にコートを返却させられたと話した」とゲラシチェンコは記し、「そのシナリオを予測した人は何人いただろう?」と述べた。

ウクライナ政府によると、ロシア兵の死者数は急増している。ウクライナ軍は9日、過去3日間でロシア兵3000人近くが死亡したと発表した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米首都近郊で起きた1月の空中衝突事故、連邦政府が責

ワールド

南アCPI、11月は前年比+3.5%に鈍化 来年の

ワールド

トランプ氏、国民向け演説で実績強調 支持率低迷の中

ワールド

ドイツ予算委、500億ユーロ超の防衛契約承認 過去
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中