最新記事

日本のヤバい未来 2050

建設現場に若手が足りない......未来の日本では道路や橋がボロボロのまま放置される

THE FORECAST FOR SHRINKING JAPAN

2023年2月1日(水)16時30分
河合雅司(作家・ジャーナリスト)

建設現場でも人手不足が加速中 Toru Hanai-REUTERS

<建設業界では「4週4休以下」が36.3%、実労働時間は全産業に比べて21.2%も長い。「雇用環境が劣悪」というイメージで若手が集まらず、人口減少後の日本では老朽化する道路や橋を直す人がいなくなる?>

※ニューズウィーク日本版2023年2月7日号「日本のヤバい未来 2050」特集では、ベストセラー『未来の年表』の著者・河合雅司氏が数々のデータから5つの業界の大変化を映し出す。今回の記事では人手不足が特に深刻な「建設業界」の未来図を紹介。

建設業も人口減少の影響を大きく受ける。

国土交通省によれば、建物や建築物の生産高である建設投資は1992年度の約84兆円がピークだ。2021年度は58兆4000億円で、ピーク時より30.5%減る見通しだ。

人口減少が進むと需要が現行水準を維持することは考えづらいが、一方で、建設業の場合には政府投資の拡大が見込まれる。社会インフラの多くが高度経済成長期以降に整備されており、老朽化が目立つため、更新が喫緊の課題となっているからだ。

例えば、全国に約72万カ所ある道路橋梁の場合、建設後50年を経過する施設の割合は、2019年3月時点の27%から、2029年3月には52%へと跳ね上がる。トンネルや港湾岸壁、水門といった河川管理施設なども大規模に手を入れなければならない時期を迎えている。

建設業への人口減少の影響は、他業種とは異なり就業者の減少という形で色濃く表れるということである。

国交省の推計によれば建設業就業者はコロナ禍前の2018年度時点で既に前年度の331万人より約2万人少なくなっている。さらに、2024年度からは改正労働基準法の適用に向けて時間外労働の上限規制も考慮しなければならなくなる。建築投資が2017年度と同水準と仮定した場合、例えば製造業を下回る労働時間(5年で5%減少)とするためには新規に16万人増やす必要があるというのだ。推計は外国人労働者について3万人ほど少なくなると試算しており、合計すれば2023年度までに約21万人を確保しなければならない。

これを新規学卒者だけで賄うことは難しい。総務省の人口推計によれば2021年10月1日現在の20歳男性人口は59万9000人だ。女性を含めても116万9000人である。各業種による〝若者争奪戦〟は激化の一途だというのに、建設業だけで20歳男性人口の3分の1を確保するというのは、さすがに無理がある。

これに対して国交省は対案を示している。建設現場の生産性を年間1%向上させることで16万人分の人手を確保したのと同じ効果が得られると試算し、新規学卒者を1万5000人採用し、外国人労働者を約3万5000人受け入れれば対応できるというのである。

だが、国交省の皮算用どおりにいくとは限らない。国交省の別の資料によれば、建設業における2021年の年間実労働時間は全産業の1632時間と比べて346時間、率にすると21.2%も長い。休日状況も建設業全体で見ると36.3%が「4週4休以下」となっており、「4週8休」の週休2日となっている人は19.5%にすぎない。技能労働者(建設工事の直接的な作業を行う人)の賃金も低い。2019年で比較すると、全産業の男性労働者が560万9700円なのに対し、建設業の男性技能労働者は462万3900円だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、貿易協定後も「10%関税維持」 条件提

ワールド

ロシア、30日間停戦を支持 「ニュアンス」が考慮さ

ビジネス

NY外為市場=ドル、対円・ユーロで週間上昇へ 貿易

ビジネス

米国株式市場=米中協議控え小動き、トランプ氏の関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 5
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 6
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 7
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 8
    「金ぴか時代」の王を目指すトランプの下、ホワイト…
  • 9
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 10
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 10
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中