最新記事

エネルギー

電力需給ひっ迫対策、東京都が推進する「HTT」とは?

2023年2月16日(木)11時30分
※TOKYO UPDATESより転載
暖房のスイッチ

(写真はイメージです) RossHelen-iStock

<エネルギー料金の上昇、電力需給のひっ迫と、電力供給を巡り厳しい局面が続く。現在直面している問題と東京都が推進するHTTの重要性について、東京大学生産技術研究所特任教授・岩船由美子氏に聞いた>

エネルギーに関していま直面している問題

経済や国際情勢、天候の変化などによって確実性が大きく左右されるエネルギー需給問題。ヨーロッパではロシアによるウクライナへの軍事侵攻が燃料の価格上昇を招き、厳しい状態が続いている。また日本でも、2021年の冬に記録的な寒波とLNG(天然ガス)不足が重なり、電力需給がひっ迫したことが記憶に新しい。

東京大学生産技術研究所の岩船由美子特任教授は、「電力の『不足』と言っても、『高さ』と『面積』の2種類があります。夏はどちらかというと高さの不足が、そして冬は面積の不足が問題になります」と語る。ここで言う「高さ」は瞬間瞬間に必要な電力、そして「面積」は瞬時の電力に継続時間をかけた電力量を指す。

冬は夏に比べて突出して電力需要が大きい時間があるというより全体的にフラットだが、外気温と室温の差が夏よりも大きく、また日照時間が短いため暖房や照明の機器で消費するトータルの電力量は多くなる。「夏に関してはピークタイムをできるだけずらすといった対策もありますが、冬は全体の面積が足りなくなる可能性があるので、基本的には節電が求められます」

東京都の取り組みはどう貢献するか?

エネルギーの安定確保に向けた施策が世界中の国・地域で実施されている。東京都では「HTT(電力をH減らす・T創る・T蓄める)を進めよう」と呼びかけ、家庭向け、事業者向けそれぞれにさまざまな取り組みや支援を行っている。このうちHTT補助事業として、高断熱窓・高断熱ドアへの改修や蓄電池、V2H(Vehicle to Home/住宅と自動車との間で相互に電気を供給しあえるシステム)電気自動車などに対して補助を行う。

また太陽光発電については、アメリカ・カリフォルニア州では2020年に州内全ての新築低層住宅に太陽光発電設置を義務化し、EUでは2029年までにすべての新築住宅において太陽光発電設備の設置を義務づけることを提案しているが、東京都も同様に新築建物を対象とした太陽光発電の設置義務化について2025年の制度施行を目標に準備を進めている。

「発電は省エネと同様に余力が増える方向ですから当然役に立ちますし、蓄電はピーク時の需要をオフピーク時にずらすことができるという意味で非常に重要です。太陽光発電は脱炭素にも貢献します。また一番難しいのは新築住宅よりも既存住宅の断熱改修などだと思いますが、東京都はそこに予算をしっかり割いている」

tokyoupdates230214_htt2.jpg

東京都の施策の一つ、断熱・太陽光住宅普及拡大事業として、断熱改修、蓄電池の設置、太陽光発電設備の設置を支援する取り組みを行っている

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBの利下げ開始は「適切」、FRBは慎重さ維持を

ビジネス

米労働生産性改定値、24年第1四半期は0.2%上昇

ワールド

バイデン氏、ウクライナ支援継続を確約 仏でDデー8

ビジネス

カナダ貿易赤字、4月は予想より小幅 エネルギー・金
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナの日本人
特集:ウクライナの日本人
2024年6月11日号(6/ 4発売)

義勇兵、ボランティア、長期の在住者......。銃弾が飛び交う異国に彼らが滞在し続ける理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車が、平原進むロシアの装甲車2台を「爆破」する決定的瞬間

  • 2

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 3

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らかに ヒト以外で確認されたのは初めて

  • 4

    「出生率0.72」韓国の人口政策に(まだ)勝算あり

  • 5

    アメリカ兵器でのロシア領内攻撃容認、プーチンの「…

  • 6

    なぜ「管理職は罰ゲーム」と言われるようになったの…

  • 7

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 3

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 5

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「…

  • 6

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 7

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 8

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 9

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 10

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 8

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中