最新記事

ロシア軍事

「西側には撃ち落とせない」 ──プーチンが極超音速ミサイル「ツィルコン」を実戦配備

Russia Touts New Zircon Missiles Can 'Overcome Any' Defense Systems

2023年1月5日(木)15時46分
シモーヌ・カーター

1月4日、ロシアの軍港セベロモルスクを出航したツィルコン搭載艦  Russian Defence Ministry/ REUTERS

<開発競争でアメリカに先んじ、西側のいかなる対空システムも破れるとプーチンが豪語する「ツィルコン」搭載艦が地中海に向かった。ウクライナ侵攻の終わりはますます遠い>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は4日、核弾頭搭載可能な極超音速巡航ミサイル「ツィルコン」を搭載したフリゲート艦「アドミラル・ゴルシコフ」を実践配備したと発表。他の国にはツィルコンと肩を並べるような兵器はないと述べた。

ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相はプーチンとのビデオ会議で、アドミラル・ゴルシコフは大西洋からインド洋、そして地中海に至る航海に出たと述べた。同艦は「海と陸上のどちらにいる敵にもピンポイントで強力な攻撃」を行うことができ、実戦配備は大きな意味を持つ、とがロシア高官らは言う。

プーチンは軍の幹部らに対し、ツィルコンは「他に類を見ない最強兵器」だと労った。

「世界のいかなる国にも(ツィルコンと)同じようなものは存在しない」とプーチンは述べた。「非常に強力な兵器で、ロシアを外部の脅威から確実に守ると共に、国益を守る役に立つと確信している」

ツィルコンの配備は、ロシアがウクライナ侵攻を終わらせる気がないことを示している。開始から1年近く、侵攻は世界各国の指導者から非難を浴びてきた。

「さまざまな環境条件での演習」を予定

ショイグは4日、ツィルコンについて「いかなる先進的な近代防空・対ミサイルシステムをも出し抜くことができるのは間違いない」と述べた。一方でショイグは、アドミラル・ゴルシコフの航海の主な目的はロシアへの脅威に対抗するとともに、「友好国とともに地域の平和と安定を維持すること」だとも述べた。

ショイグはまた、同艦の乗組員は「さまざまな環境条件における」長距離巡航ミサイルや極超音速兵器の演習を行うだろうと述べた。

米FOXニュースによれば、同艦の実戦配備に先立つ数カ月前、ロシア国防省はツィルコンの発射実験成功を発表している。この時のツィルコンの飛翔距離は約1000キロメートルだったという。

一方、ロシアの独立系ニュースサイトのメデューサはツィルコンについて、「対艦超極音速ミサイルで、最高時速はマッハ9(音速の9倍)を超える」と伝えている。西側の既存の兵器では、探知、追尾、迎撃は困難だという(動画参照)。

プーチンは昨年、アドミラル・ゴルシコフがロシア海軍初のツィルコン搭載艦になると明らかにしていた。プーチンは「極超音速兵器の開発競争」においてロシアはアメリカを凌駕したと述べるとともに、ツィルコンの開発は西側の脅威に対応したものだと主張したとメデューサは伝えている。

伝えられるところでは、ロシアは他にもミサイルの性能試験も行っている。FOXニュースによれば核弾頭の搭載も可能な大型ICBM(大陸間弾道ミサイル)、「サルマート」の試験発射もその一例だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、アラスカで3者会談にオープン ウクライ

ビジネス

米、エヌビディアに中国向け「H20」輸出許可付与=

ワールド

欧州、ウクライナの利益守る必要性強調 米ロ会談控え

ワールド

アラスカにゼレンスキー氏招待も、米が検討=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 2
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段の前に立つ女性が取った「驚きの行動」にSNSでは称賛の嵐
  • 3
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中印のジェネリック潰し
  • 4
    伝説的バンドKISSのジーン・シモンズ...75歳の彼の意…
  • 5
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    60代、70代でも性欲は衰えない!高齢者の性行為が長…
  • 9
    メーガン妃の「盗作疑惑」...「1点」と語ったパメラ・…
  • 10
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 10
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中