最新記事

外交

強大な近隣国に攻撃されるウクライナの現状を、「明日のわが身」と考えよ(ドイツ外相)

2023年1月19日(木)17時32分
アンナレーナ・ベアボック(ドイツ外相)
ウクライナの小麦畑

ウクライナ産の小麦が不足して世界的食糧危機に ALEXANDER ERMOCHENKOーREUTERS

<侵略行為や弾圧、食料不足は世界全体の問題。弱い立場の人々の声を聞き、行動しなければならない>

新しい年に、どうしたら楽観的になれるか。将来を見据え、ぶれることなく、一致団結すれば目標を達成できると自信を持つ――そうした姿勢を指針にするべきだ。

2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の1カ月後、国連総会は民間人保護などを求める人道決議案を、世界各地域の計140カ国の賛成を得て採択した。各国を結び付けるのは、市民の期待に沿って行動するという共通の信念だ。だからこそ、不正義に対して中立の立場は取らないと、断固として表明した。

ロシア軍が占領した地域で性的暴行を受けた女性、射殺された交響楽団指揮者、自宅を追われた幼児――。彼らは未来の私たちかもしれない。ウクライナへの侵略行為を傍観すれば、強大な近隣国に攻撃される不安の中で誰もが生きることになる。

団結が私たちの力だ。そのためには、よりよい聴き手になるべきだ。欧州内の同盟国だけでなく、アフリカやアジア、中南米、中東のパートナー国にも耳を傾ける必要がある。

「欧州で戦争が起きているから、支持してほしいとあなたたちは言う。だが近年、私たちが紛争に苦しんでいたとき、あなたたちはどこにいたのか」。ウクライナ戦争をめぐっては、そんな声が多く上がった。

われわれ欧州の行動や国際社会に対する過去の取り組みについては、自省が必要だ。同時に、ロシアに対する軍事的・政治的・経済的依存を低下させることの難しさを訴える国々の声に耳を澄ますべきだ。

欧州で戦争が起きているからといって、私たちは国際社会に背を向けたりはしないと伝えたい。むしろ、この戦争は世界に苦しみを広げていると考えている。ロシアがウクライナの穀物輸出へのアクセスを阻害し、食料不足などの原因について嘘を拡散しているからだ。

食料危機のもう一つの根本原因

一方で、食料危機の最も深刻な根本原因の1つは気候非常事態だ。この問題に取り組むべく、私たちは力を結集していく。

気候危機の大部分を引き起こした先進工業国には、特別な責任がある。危機の緩和に取り組み、排出量を削減し、産業革命前と比べて世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える努力目標の実現可能性を維持しなければならない。気温上昇を0.1度抑えるごとに暴風雨や洪水、干ばつの深刻度が下がり、脅威は減少する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 9
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中