最新記事

ウクライナ戦争

ワグネルの囚人戦闘員5分の1に激減。「遺族」には空の棺が

Most of Wagner Prisoner Fighters Are Dead or Deserted After Soledar: Report

2023年1月26日(木)14時58分
ニック・モドワネック

セルビアのベオグラードに描かれたワグネルの壁画(1月18日) Marko Djurica-REUTERS

<ワグネルが刑務所で勧誘し、戦場に送った戦闘員約5万人のうち4万人が、既に死んだか逃げたか投降したと、専門家は言う。生死もろくに確認せず、管理もでたらめだ>

ロシアのジャーナリストによると、ロシアの民間軍事会社(PMC)ワグネル・グループの一員としてウクライナと戦うために雇われたロシアの元受刑者のうち、前線に残っているのは5分の1に過ぎないという。

囚人擁護団体「ロシア・ビハインド・バーズ」を率いるオルガ・ロマノワは、慈善団体「My Russian Rights」プロジェクトが公開したユーチューブ動画の中で、ウラジーミル・プーチン大統領の盟友エフゲニー・プリゴジンが率いるワグネルが、昨年末までに4万2000~4万3000人の囚人を動員したと語った。

ロマノワはまた、動員された元受刑者は5万人を超えた可能性が高い、とラトビアを拠点とするロシア語・英語のニュースサイト「メデューサ」で述べた。だがその約5万人の戦闘員のうち、「前線で戦っているのは1万人だけで、残りはすべて殺されるか、行方不明になるか、脱走するか、投降した」という。

プリゴジンは行方不明や脱走した元受刑者について記録を取っておらず、事実かどうかにかかわらず、そうした戦闘員を死んだものと見なしているとも語った。

遺族に送られた空の棺

メデューサは1月20日、ワグネルから夫の棺を受け取ったアンジェリーナ(仮名)という女性について報じた。彼女は棺を受け取った時は棺が空であることに気づかなかったという。

夫の埋葬式が終わった後になって、アンジェリーナはTV レイン(ロシア語ではDozhd)という現地メディアに夫はまだ生きていてウクライナで戦っていることがわかった、と語った。

アンジェリーナは他の受刑者の親族から知らされるまで、ロシアのどこかの刑務所で服役していたはずの夫がワグネルに雇われて戦っていることすら知らなかった。

「ウクライナに好感を抱いていた」夫が自発的に戦いに参加したとは思えない、と彼女は言う。

それが、ある日ワグネルから電話があり、夫がウクライナのバフムト地方で殺害されたらしいと告げられた。アンジェリーナたちに、棺とメダル、表彰状、死亡証明書が届けられた。

「ワグネルの担当者は、棺を開ける必要はないと言った。戦場に送る前に戦闘員のDNAは採取して死体とつきあわせているから、棺の中の人物が夫であることは100%保証する、と言った」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏「原発周辺への攻撃」を非難、ウクライナ原

ワールド

西側との対立、冷戦でなく「激しい」戦い ロシア外務

ワールド

スウェーデン首相、ウクライナ大統領と戦闘機供与巡り

ワールド

プーチン氏、ロは「張り子の虎」に反発 欧州が挑発な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中