最新記事

ウクライナ戦争

ロシアの戦争は今や「防衛戦」に...ウクライナ軍を恐れて設置した「竜の歯」とは?

2022年12月11日(日)13時35分
デーン・エネリオ
ウクライナの戦車と車両

ウクライナのへルソン州の道路を走るウクライナの車両(11月18日) Viacheslav Ratynskyi-Reuters

<ウクライナの支配地域を次々と失っているロシアは、自国の防衛のために「竜の歯」と呼ばれる構造物を設置し始めた>

ウクライナ軍の反抗を受けて苦戦するロシアが、ウクライナとの国境地帯に「竜の歯」と呼ばれる障害物を設置して防御態勢を整えている。これは戦車などの移動を妨害するもので、「戦車用トラップ」とも呼ばれるコンクリート製のピラミッド型の構造物だ。

■【写真】ロシア側がパニックに陥っている証拠? 国境に設置された「竜の歯」

ウクライナのニュースサイト「プラウダ」は12月7日、ロシアがウクライナとの国境に近い東部クルスク州に、「竜の歯」を設置したと報じた。

「竜の歯(元はドイツ語のDrachenzähne)」は、第二次大戦中に戦車や機械化歩兵の移動を妨げる目的で初めて使用された。アラブ首長国連邦の英語メディア「ザ・ナショナル」によれば、第二次世界大戦以降、これまで戦闘で使用されたことはなかったという。

ロシア・クルスク州のロマン・スタロボイト知事は7日、メッセージアプリ「テレグラム」への投稿の中で、既に州内に設置されている「竜の歯」の視察を行った際の様子とみられる複数の写真を共有。「国境付近の防衛強化を続けている」と書き込んだ。

「竜の歯」がどれだけ効果を発揮するのかは不明だが、むしろウクライナ軍がやってくるまで形を保っていられるかを怪しむ指摘もある。検証可能な写真や動画を元にウクライナ軍とロシア軍の装備の損失を記録しているオランダの軍事ブログ「Oryx」は、「ロシアの防衛線の一環として設置された『竜の歯』は、ウクライナの戦車を狙う前に崩れつつある」としており、既に一部の構造物は劣化しているもようだ。

「ロシアの戦争は今や防御作戦に」

プラウダによれば、ウクライナの反抗を恐れるロシア側はパニックに陥っており、「竜の歯」を設置したり塹壕を掘ったりしているという。クルスク地方は、ウクライナ西部のスーミ州と国境を接している。ロシア軍は2月下旬の軍事侵攻開始後にスーミ州の一部を制圧したものの、その後同州から撤退。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は4月、スーミ州は完全に解放されたと宣言した。

ロイター通信は11月半ば、ロシア軍が幾つもの敗北を経験したことを受けて守りの態勢に入ったと報道。「ロシアのウクライナ侵攻は今や、防御作戦となった」という西側の匿名の当局者の発言を引用して伝えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今

ワールド

APEC首脳会議、共同宣言採択し閉幕 多国間主義や

ワールド

アングル:歴史的美術品の盗難防げ、「宝石の指紋」を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中