最新記事

教育

部活動指導に教師が長時間を費やすのは世界の非常識

2022年12月7日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
課外活動のコーチ

日本でも中学校の部活動を地域に移管しようという動きが出ている Highwaystarz-Photography/iStock.

<日本の教員が課外活動の指導に充てる業務時間は、先進国平均の4倍を超えている>

日本の教員の過重労働はすっかり知れ渡っている。2018年にOECDが実施した国際教員調査(TALIS 2018)によると、中学校教員の週の平均勤務時間は56.0時間で調査参加国の中で最長だ。OECD加盟国の平均値(38.8時間)よりだいぶ長い。

だが授業・授業準備の平均時間は26.5時間で、こちらはOECDの平均値(27.2時間)より短い。その分、授業以外の業務に充てる時間が長いのだが、その中で最も長いのは部活指導時間だ。部活動は教育課程の外にある課外活動に分類される。この課外活動の指導にどれだけの時間を割いているかというと、日本の中学校教員の週平均は7.5時間で、OECD平均(1.7時間)の4倍を超える。

とくに若手の負荷が大きく、教員経験年数が5年未満の教員に限ると、およそ半数が週10時間以上を課外活動指導に充てている。こういう現実が国際標準から見てどれほど特異かを可視化するのは容易い。横軸に課外活動の指導時間の平均値、縦軸に週10時間以上の割合をとった座標上に、47の国を配置すると<図1>のようになる。

data221207-chart01.png

中学校の若手教員のデータだが、日本は右上にぶっ飛んでいる。「部活動は生徒の人間形成に寄与する、教員も関わって当然」という考えがあるが、それが常識ではなく非常識であるのがよく分かるグラフだ。

図の左下、原点付近には北欧の諸国が位置している。これらの国では教員は課外活動指導にはほぼノータッチで、この種の活動は地域のスポーツクラブ等に委ねられている。日本の教員の過重労働をもたらしている要因として、部活指導が大きいのは否めない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

物価は再び安定、現在のインフレ率は需給反映せず=F

ワールド

ハセット氏のFRB議長候補指名、トランプ氏周辺から

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 6
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    「職場での閲覧には注意」一糸まとわぬ姿で鼠蹊部(…
  • 9
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 10
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中