最新記事

中国

「感染しても医者に行くな」?──ゼロコロナやめた中国の暴論

China eyes return to normalcy in 2023 after ending zero-COVID policy

2022年12月15日(木)18時35分
ジョン・フェン

発熱外来の前にできた列と防護服を着た医療スタッフ(12月15日、北京) Josh Arslan-REUTERS

<政府が行動制限を緩和する一方で感染拡大が続く中国。医療崩壊を防ぐ役目を負わされた御用学者たちの言い分>

中国での生活は、来年半ばまでにパンデミック前のレベルに戻る可能性がある――中国政府が新型コロナ対策の見直しを進めるなか、中国の公衆衛生の第一人者で、政府の新型コロナ対策の策定にも寄与した鐘南山がこのような予想を示した。

新型コロナウイルスのパンデミックが始まってから3年以上が経ち、世論の反発からよやく制限緩和が始まったが、中国では再び全国的に感染が拡大している。しかし鐘は、今年の冬に新型コロナで大勢の死者が出る可能性があるという予測には否定的な見方を示す。

2020年8月に習近平国家主席から共和国勲章を授与された鐘は、「国民の生活が2019年以前のレベルに戻るのはいつか、という質問があった。来年の前半、3月以降だろうというのが私の考えだ」と述べた。「保証はできないが、そのような傾向が示されている」

これは鐘(現在86)が12月9日に中国南部の製造業の中心地である広州を訪れた際に、記者会見で述べた言葉で、翌10日に地元紙「南方日報」が報じた。人口1900万人の広州では、習の「ゼロコロナ政策」に対して暴力的な抗議デモが起きていた。

厳しい制限から一転「感染の心配なし」

鐘はまた、中国は感染の抑制から重症化の予防へと重点を移しつつあり、今の感染のピークは1月半ば〜2月半ばになるだろうと予測した。

中国の専門家たちはこれまで、ゼロコロナ政策の必要性について、政府の方針と矛盾する意見を述べることには慎重な姿勢を取ってきた。だが中央政府が、経済活動再開のリスクは少ないと急激な方針転換を行ったことで、鐘をはじめとする専門家は今、その説明を行う役割を担っている。

中国国営メディアの新華社通信が10日に改めて報じた発言の中で鐘は、現在流行しているオミクロン株の感染のうち99%は重症化しないと述べ、大半の人は5~7日で回復して病院で治療を受ける必要もないと説明。「新型コロナに感染することを心配する必要はないし、感染した人々を差別してはならない」と述べた。

中国の公衆衛生当局は11月、中国の人口14億人の90%以上が、新型コロナワクチンの接種を既定の回数(2回)終えていると述べた。しかし自然免疫を獲得した人が少ないことを考慮に入れると、今回の感染拡大では何億人もの人が新型コロナに感染し、100万人超の死者が出ると予測する数理モデルも複数ある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中