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ミサイル防衛

北朝鮮のICBMはアメリカの敵ではない、が......

U.S. Has These Options to Stop A Missile Coming from North Korea

2022年11月21日(月)17時26分
キャサリン・ファン

北朝鮮を刺激した米韓空軍合同軍事演習。写真は米空軍のF-35B(11月1日、韓国の群山基地) Yonhap/REUTERS

<北朝鮮のミサイルなら防衛システムは配備済み。問題は中国・ロシアのミサイルや超音速兵器だ>

北朝鮮は11月17〜18日にかけて相次いでミサイルを発射したが、このうち18日に発射したミサイルについて、日本政府はアメリカ本土まで到達する能力のある大陸間弾道ミサイル(ICBM)だとの見方を示した。

18日、韓国軍合同参謀本部は北朝鮮が午前10時15分頃(現地時間)に首都平壌の近郊からICBMを1発を発射したと発表した。飛行距離は約1000キロ、高度は約6000キロに達したという。

日本の浜田靖一防衛相は同日、「今回発射されたICBM級弾道ミサイルは、今回の飛翔軌道に基づいて計算すると、弾頭重量等によっては、1万5000キロを超える射程となり得ると見られ、その場合、米国本土が射程に含まれる」との見方を示した。

アメリカは今回のミサイル発射を、国連決議に対する「恥知らずな」違反だと非難するとともに分析を進めている。もっとも、米情報当局は以前から、太平洋の向こうからの攻撃への備えを行っている。

2017年に北朝鮮がミサイル発射を行った際、ジェームズ・マティス米国防長官(当時)は、北朝鮮がアメリカを含む「世界中のすべての場所」を攻撃できる能力があることを示したと述べた。

それでも、ミサイル攻撃による大きな被害を防ぐ選択肢は複数ある。北朝鮮が長距離兵器の開発を続ける一方で、米情報当局はミサイル防衛システムの強化に努めきた。

米海軍大学のスティーブ・シンケル教授は本誌に対し、米国防総省は北朝鮮のICBMを迎撃できる地上配備型迎撃ミサイル(GBI)をカリフォルニアとアラスカに44発配備していると語る。

大気圏外で破壊する

GBIはアメリカの地上配備型ミッドコース防衛(GMD)の一翼を担っており、「北朝鮮が保有しているかも知れないような、限られた数の核兵器を持っている敵を抑止するように設計されている」とシンケルは言う。

GBIにはロシアや中国からの弾頭を無力化する力はないないかも知れないが、北朝鮮のICBMが大気圏外を飛行している間に迎撃することはできる。

だが、ロシアや中国が進めている極超音速滑空体の開発がアメリカに「大きな脅威と課題」を突きつけているとシンケルは言う。なぜならアメリカはまだ極超音速の兵器に対する防衛システムを開発できていないからだ。3月19日にロシア軍高官は極超音速ミサイルを初めて発射したと発表した。

その直後の24日、米北方軍および北米航空宇宙防衛司令部のグレン・バンハーク司令官は、国防総省が「攻撃が行われているかどうかを判断し、国家指導者たちにできる限りの時間と選択肢を与える」のに役立つ技術を開発していると述べた。

「私には極超音速滑空体からの防衛はできないし、その任にもない」とバンハークは述べた。

ICBMや極超音速兵器などを「できるだけ早く検知し、追跡するための、統合された宇宙配備型の領域認識ネットワークの開発と配備が国防総省にとって急務だ」とも彼は述べた。

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