最新記事

食料危機

コロナ禍、ウクライナ侵攻、気候変動で急増するアフリカの飢餓人口。WFP・JICA専門家が考える、これからの食料安全保障

2022年10月4日(火)18時40分
※JICAトピックスより転載

jicatopics20221004foodsecurity-6.jpg

西アフリカ・モーリタニア。干ばつで干からびた家畜の死骸の傍らに立つ津村さん

天目石さん:まさにアフリカがさまざまなショックに弱いことが、この深刻な食料危機を招いているのだと思います。私が3年半ほどケニアにいた時、毎年のように干ばつや豪雨といった異常気象に直面しましたが、十分な策は講じられていませんでした。アフリカの国々がショックに対応できる能力を身につけていくことができるかが、今後、問われていくと考えます。

ショックへの対応能力向上に向けた、中長期的な取り組みが不可欠

――さまざまな要因が絡み合う西アフリカでの未曽有の食料危機に対処するため、今後、どのような取り組みが必要なのでしょうか?

津村さん:これまで国連WFPの職員としてアフリカで14年間、そのうち西アフリカでは、セネガル、モーリタニア、シエラレオネ、そしてガンビアで支援活動に携わってきました。国連WFPは、紛争や自然災害などの被災者に向け、食料の配布や食料を購入するための現金の支給といった緊急時の支援をしています。同時に、災害などに対応できる能力を高め、強靭な国づくりに向けた自立開発支援も担っています。特に西アフリカは、さまざまなショックに弱い国が多く、中長期的な開発支援が不可欠です。

ガンビアでは現在、地産地消の学校給食の普及プログラムを進めています。地元の小規模農家から購入した食材で学校給食を作る取り組みです。子どもたちの栄養改善を図ると共に、自立した地域社会をつくることで貧困の悪循環を断つことを目指します。また、シエラレオネではJICAと連携し、稲作やかんがい設備の技術の普及を進めてきました。

jicatopics20221004foodsecurity-7.jpg

ガンビアの小学校で給食を食べる子どもたち

天目石さん:JICAはアフリカで、生産者が「儲かる」農業を目指すSHEP(市場志向型農業振興)アプローチや稲作振興のための共同体(CARD)を推進しています。農業分野では長期的な視野から農家の能力開発を通じて対応能力を高められるように協力に取り組んでいます。国連WFPは緊急人道支援とともに開発支援にも携わっており、ぜひ互いの強みを生かし、脆弱な国々の強靭性を高めていければと思っています。

jicatopics20221004foodsecurity-8.jpg

JICAが進めるSHEP(市場志向型農業振興)アプローチを実践し、市場で売れる野菜を栽培するケニアの農家

津村さん:食料危機の問題が複雑となっているなか、さまざまな組織とお互いに補完し合いながら取り組んでいくことが重要です。なかでも、学校現場では、地産地消型の給食をはじめ、保健、栄養、教育など、さまざまな分野での取り組みがあります。ぜひ他の機関とも連携していきたいです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エアバス、11月の納入数が減少 胴体パネル問題で

ワールド

台湾最大野党主席、中国版インスタの禁止措置は検閲と

ビジネス

ドイツ景気回復、来年も抑制 国際貿易が低迷=IW研

ワールド

台湾、中国の軍事活動に懸念表明 ロイター報道受け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 8
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 9
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 10
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中