最新記事

ファクトチェック

「ウクライナが『汚い爆弾』を開発」と、ロシアが提示した「証拠写真」は本物?

Fact Check: Russia's Claim That Photo Shows 'Dirty Bomb' in Ukraine

2022年10月28日(金)17時35分
トム・ノートン
ロシアドローン攻撃

ロシアによるドローン攻撃で煙を上げるウクライナの首都キーウのビル(2022年10月) Gleb Garanich-Reuters

<ロシアは「ウクライナが放射性物質を使った汚い爆弾を開発している」と主張し、証拠とされる写真を公開。この正当性をファクトチェックしてみると>

ウクライナが「汚い爆弾(ダーティーボム)」を使おうとしている──この根拠のない非難をロシアはいまだに繰り返し、人々の恐怖心を煽っている。汚い爆弾とは、従来型の爆発物と放射性物質を組み合わせたもので、飛散すると人々に危害が及ぶ。そして10月24日、ロシア外務省はその「証拠」だとする複数の写真を組み合わせた画像をツイッターに投稿した。

■【写真】ウクライナ「汚い爆弾」開発の証拠と、ロシアが主張する画像

もともとウクライナが汚い爆弾を使おうとしていると主張しだしたのは、ロシアの国防相セルゲイ・ショイグで、10月23日におこなわれた西側諸国と電話会談中の発言だった。アメリカは、この主張を「虚偽」だとして退けた。ロシアはこうした主張を行う前に、自らの核兵器使用の可能性をほのめかしている。

いっぽうでロシア外務省は、発電所や核物質の写真がいくつも並んだ図表を添えたツイートを投稿した。これはどうやら、これまで「根拠がない」と言われてきたロシアが、自らの主張を裏づけるために提示した最初の「証拠」ということになるようだ。

では、ロシアは何を主張しているのか。ロシア外務省は10月24日のツイートで、ロシア国防省の情報として以下のように述べた。「ウクライナの2つの組織が、いわゆる『汚い爆弾』を製造するよう、直接指示を受けている。その作業は最終段階に入っている」

このツイートには、発電所と「廃棄物処理場」の写真が何枚か含まれた図表が添えられており、1枚の写真には「『汚い爆弾』の開発」とタイトルがつけられている。

ロシアの「証拠写真」をファクトチェック

このロシアの「証拠」が、正当なものなのかを検証してみよう。

そもそも、ウクライナは核兵器を保有していない。ソ連崩壊後には世界3位の核兵器保有国となっていたが、1990年代に自主的に核兵器を放棄し、その見返りに安全と主権の保障を手にしたからだ。核兵器の放棄は、旧ソ連のウクライナやベラルーシといった国々の主権と領土を尊重することを定めて、アメリカやロシアなどが署名したブダペスト覚書の一環だった。

ウクライナと米当局は、ウクライナが汚い爆弾を開発しているというロシア側の主張について、強く否認している。米国家安全保障会議(NSC)の戦略広報調整官ジョン・カービーは10月24日、「ロシアの申し立てには何の根拠もない」と述べている。

「ロシア側が核兵器使用の準備を進めている様子は、依然として見られない」とカービーは述べた。「また、汚い爆弾が使用される可能性についても、現時点では何もわかっていない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ワールド

韓国最高裁、李在明氏の無罪判決破棄 大統領選出馬資
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中