最新記事

新興宗教

怒り狂う父に叫んだ言葉...カルト教団で「性的サービス要員」候補だった少女の「脱出の記録」

I Escaped a Cult

2022年10月13日(木)17時50分
ダニエラ・メスチャネク・ヤング(カルトサバイバー)
ダニエラ・メスチャネク・ヤング

フランス南部で行われた「チルドレン・オブ・ゴッド」の摘発(1993年6月)  STRINGER-Reuters

<16歳以上の女性に「宗教的売春」を強要するカルト教団から逃げ出し、外の世界で戦ってきた私を、理解してくれる人や場所を見つけることができた>

自由になりたかった。どうしても。父の顔は怒りで真っ赤だった。私はドアを開け、心の中で9年間、積み上げてきた叫びを口にした。「ファミリーをやめたい!」

■【写真】その美貌により、カルト教団内で「性的な要員」と見なされることになった筆者のヤング

チルドレン・オブ・ゴッド(現ファミリー・インターナショナル)は、1968年に「預言者」デービッド・バーグによって設立された。信者は俗世の財産を捨ててイエス・キリストに人生をささげ、「ファミリー」として共同生活を営んだ。子供たちは共同体の中で育てられ、搾取された。私は、宗教ビデオを世界中で売るために働かされた。

バーグは、神はセックスを愛していて、悪魔がセックスを悪魔化したと説き始めた。私が脱出した理由の1つもそれだ。あと5カ月ほどで16歳になるので、セックス要員と見なされる予定だった。

教団の「宗教的売春」は1974年に始まって87年まで続いた。魅力的な女性信者が「男を釣る漁師」として、信者を増やし寄付を集めた。

メキシコの山奥の教団施設を出た15歳の私は、グレイハウンドのバスを降りてアメリカの地を踏んだ。長い旅だった。私の家族は代々の信者で、教団が「システム」と呼ぶ外の世界は純粋な悪だと、心の底から信じていた。

就学や予防接種の記録が一切なかった

その地の高校で、私は告げられた。「残念ですが、あなたを入学させられません。あなたは存在しません」

私には就学や予防接種の記録が一切なかったから、状況は理解できた。それでも、裏切り者はどうなるかと教団に繰り返し脅されてきたとおりでもあった。その後もずっと、自分が別の惑星から来たような気がして苦しかった。

白人でブロンド、なまりも少ないという「特権」のおかげで、私は一人の悩めるティーンエージャーとしてアメリカの片隅でひっそりと生きることができた。テキサス州ヒューストンで、先に教団から逃げた姉と暮らし始めた。

姉のボーイフレンドが州を説得してくれて、高校を2年間で卒業することができた。大学も優秀な成績で卒業したが、自分の将来について考えたことは一度もなかった。

卒業後に米軍に入隊したのは、自分が溶け込める世界だと思ったからだ。外の世界のカオスを経験した私は、組織の中に戻りたくて仕方がなかった。どこに行って何を着るべきかを教えてくれる人がいて、仲間が周りにいて、私たちが共有する使命は正しいものだと思えるところに。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪ボンダイビーチ銃撃、容疑者親子の軍事訓練示す証拠

ビジネス

英BP、豪ウッドサイドCEOを次期トップに任命 現

ワールド

アルゼンチンの長期外貨建て格付け「CCC+」に引き

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米ハイテク株安受け半導体
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中