最新記事

教育

日本全国の「小学校卒」の人たちは推計およそ100万人

2022年9月7日(水)11時10分
舞田敏彦(教育社会学者)

公表統計で分かる小学校卒は約80万人だが、不詳者の割り振り分を足すと95万人ほど。メディアでは「小学校卒80万人」という見出しになっているが、「小学校卒およそ100万人」としてもいいと思う。結構な数で、多くは義務教育を終えられなかった高齢者や外国人等で、彼らが学ぶ夜間中学の整備が求められる。そうした教育機会の整備は地域レベルでなされるものなので、都道府県別の数値も試算してみた。学歴不詳者の割り振り分も足した、不詳補完推計値だ<表2>。

data220907-chart02.png

多い順に並べているが、最も多いのは北海道で6万3278人となっている。おおよそ人口規模と比例しているが、新潟、静岡、青森、岩手、沖縄といった県も上位であり、地域性のようなものもある。

教育の機会を欲している人の数だ。各自治体はこういう情報を把握し、教育計画の立案に活かすことが求められる。『国勢調査』の原資料に当たれば、市町村レベルのデータも出せる。

なお中学校卒も加えると、数は桁違いに膨れ上がる。<表1>によると、中学校卒(不詳補完推計値)は1324万3384人で東京都の人口よりも多い。今でこそ高校進学率は100%近いが、昔はそうではなかった。1960年代前半、団塊世代が15歳だった頃も6割ほどだった(地方は半分未満)。働きながら定時制高校に通う勤労青年もいたが、卒業にこぎつけるのは容易ではなかった。

「今からでも高校に...」。こういう思いの人もいるだろう。事実、孫世代の生徒と机を並べる高齢者のニュースはよく見かける。高校の入学年齢に制限はない。各地で高校統廃合が進んでいるが、教育の機会を求めているのは10代の生徒だけではない。

逆ピラミッドの年齢構成の社会では、上の世代も含めた教育計画の立案が求められる。それは、ここで出した小・中学校卒の人口量を一瞥するだけで分かることだ。

<資料:総務省『国勢調査』(2020年)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ブラジル前大統領の刑期短縮法案、上院も可決 ルラ氏

ワールド

米、新たな対ロ制裁準備 プーチン氏が和平合意拒否な

ワールド

ロシア産ナフサ、トランプ氏のタンカー封鎖命令で対ベ

ビジネス

EXCLUSIVE-FRB、シティへの改善勧告を解
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中