最新記事

ロシア

ウクライナ侵攻から半年、巨額損失で「万策尽きた」プーチン

Putin's 5 Biggest Military Losses in Ukraine Cost Him Over $1 Billion

2022年8月25日(木)15時25分
ゾーエ・ストロズースキ

軍事侵攻から半年、プーチンにとっては想定外の連続だった Maxim Shemetov-REUTERS

<ミサイル巡洋艦「モスクワ」沈没をはじめとする5大損失が大きな痛手に>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、これまでにウクライナでの戦争で被った最も大きな5つの損失が、合わせて10億ドル以上にのぼることが分かった。

米フォーブス誌の計算によれば、ロシア軍にとって最大の痛手となったのは、ロシア黒海艦隊の旗艦であるミサイル巡洋艦「モスクワ」の沈没だ。4月に沈没した「モスクワ」の価値は、7億5000万ドル相当とされている。ウクライナ側は自分たちが対艦ミサイルを命中させて沈没させたと主張したが、ロシア側は艦上での火災が原因だったと主張している。

残る4つの重大損失は、8600万ドル相当のイリューシンIL76輸送機、7500万ドル相当の大型揚陸艦「サラトフ」、5000万ドル相当のスホーイSu30SM戦闘機、4000万ドル相当のスホーイSu34戦闘機で、これらを合計すると10億ドルを上回る計算になる。

フォーブスの計算によれば、軍事侵攻を開始した2月24日から8月24日までの6カ月間で、ロシア軍は1万2142点の軍事装備品を失い、その価値は合計で165億6000万ドル相当にのぼる。ミサイルは、この合計額には含まれていないという。

【動画】ロシア巡洋艦「モスクワ」の「最期」

「迅速な勝利」の目論見が崩れた

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、ウクライナの独立記念日でもあった8月24日に、開始から半年の節目を迎えた。ロシアが迅速に勝利を収めるだろうという一部の予想は、西側諸国の支援を受けたウクライナ側の粘り強い抵抗によって打ち砕かれた。この数週間は、ウクライナがアメリカの高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)など、西側諸国から供与された兵器を駆使して、ロシア側の標的への攻撃を成功させている。

ウクライナ側が次々と攻撃を成功させるなか、ロシア政府は兵員を補充するために強制徴用を行い、今いる兵士にも、士気を上げるために現金支給のインセンティブを与えているとみられる。

元米陸軍大将のバリー・マッカフリーは8月22日、ツイッターへの投稿で、プーチンは「万策尽きて」おり、彼にとっての状況は今後、急速に悪化していくだろうと述べた。マッカフリーはまた、ロシア軍は「作戦面で困難な状況にあり」、ロシア全体に「軍事的な損失と経済的な孤立のの深刻なひずみが生じ始めている」とも指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

グレタさん、ロンドンで一時拘束 親パレスチナ支援デ

ビジネス

ワーナー買収戦、パラマウントの新提案は不十分と主要

ワールド

ベネズエラ国会、海賊行為・封鎖取り締まる新法承認 

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米株高の流れ引き継ぐ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中