最新記事

沖縄の論点

玉城デニー知事に聞く、沖縄の現在と未来──「オール沖縄の民意はいささかも変わらず」

OKINAWA AT A CROSSROARDS

2022年6月21日(火)18時50分
渡辺豪(ジャーナリスト)

「辺野古阻止」を掲げた故・翁長雄志前知事は命が尽きる直前まで、政府や本土の無理解と闘った。その後継として過去最多得票で当選した玉城は2019年4月の筆者のインタビューで、エネルギーの源泉は県民の民意だと語った。「巨大な政府権力と向き合えるのは草の根の民意にしっかり後押しいただいているから」だと。

今はどうだろう。

14年知事選で翁長の選対本部長を務め、18年知事選で玉城の支持母体の会長も務めた県内有力企業「金秀グループ」の呉屋守將会長は昨年9月、辺野古新基地建設に反対する「オール沖縄」系の候補を支持しないと表明。経済界や保守層との懸け橋だった呉屋の離脱は「オール沖縄」衰微の潮目になった。辺野古問題をめぐる国との協議が停滞するなか、今年2月にはロシアのウクライナ侵攻が始まり、国内外の安全保障環境に対する認識も大きく変わった。

「県民は長い間、選挙のたびに基地か経済かという二者択一を迫られてきた。しかし保守本流の政治家だった翁長前知事が『イデオロギーよりアイデンティティー』と唱え、辺野古への移設を認めない県民の民意を結集したのが『オール沖縄』です。私はこの民意の方向性はいささかも変わっていないと思います」

ただ、沖縄で語り継がれてきた「軍事基地は攻撃の的になる」「軍隊は住民を守らない」といった沖縄戦の教訓が、とりわけ若い世代で薄れているのも事実だ。

「ウクライナ情勢が伝えられるなか、抑止力強化や憲法改正の必要性を説く声が高まっていますが、今こそ冷静になるべきです。米軍の駐留が必要、自衛隊もミサイルを配備すべきだというのは有事ありきの考え方です。離島が攻撃されたら誰が住民を助けるのか、戦争の一番の犠牲になるのは誰かと問い掛けたい」

「ザル経済」の転換がカギ

玉城は「過激な反米・反基地思想」の持ち主のように刷り込まれている人も本土では少なくないが、もともと「革新」の政治家ではない。日米安保も自衛隊も肯定する立場だ。とはいえ、支持母体の「オール沖縄」が革新色を強めれば、必然的にそれに重なって映る。玉城はそうした流れを払拭するようにこう話した。

「革新という言葉は、『なんでも反対』というイメージを持たせるために使われる。だが革新と言われる側も外交や経済についてしっかり発信している。保守と革新の争いという枠組みで捉えられてしまうと、革新はガリガリに尖(とが)った鉛筆の先みたいなイメージになる。鉛筆は鉛筆でも、柔らかい5Bくらいでいい。尖らなくてもきれいな線は描けます」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結

ビジネス

首都圏マンション、8月発売戸数78%増 価格2カ月

ワールド

米FRBのSRF、今月末に市場安定の役割果たせるか

ワールド

米政権、政治暴力やヘイトスピーチ規制の大統領令準備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中