最新記事

ウクライナ情勢

ウクライナ戦線、狭い範囲での長期戦へ...「解放戦争」から「絶滅戦争」に移行の様相

With Front Lines Static, Ukraine and Russia Shift Forces For Long War

2022年6月10日(金)17時58分
マイケル・ワシウラ

民間人にもかなりの犠牲者が出ている。死亡者や避難民の確かな数はいまだ得られていないが、ルガンスク州のセルヒィ・ガイダイ知事は6月5日、同州の都市セベロドネツィクには、侵攻前におよそ10万人が住んでいたが、残っているのは推定でわずか1万5000人だと発表した。

完全に破壊されたセベロドネツィク近郊を写した衛星写真 @AhmedSh75151405/Twitter


一方でロシア側は、歩兵部隊の頭数が不足している。ロシア政府はこれまでのところ、国民総動員を発令しないことを選択している。そのため、最近のロシア軍による進軍は、兵士よりも砲撃に、かなり大きく依存したかたちになっている。

ロシアの「名目」とはかけ離れた行動

そしてロシア側に言わせれば、この戦略は功を奏しているようだ。

ロシアの軍事専門家ウラジスラフ・シュリーギンは本誌に、「われわれは4月末以降、先端技術を利用した偵察行動と圧倒的な火力を組み合わせている」と述べた。「ロシア軍は機動大隊を複数有しているが、われわれにとって最も効果的なのは、砲撃で敵をとにかく苦しめる戦い方だ」

ロシア軍は、まずはウクライナの諸都市に激しい砲撃を加えてから、ゆっくりと着実に進軍している。その徹底された攻撃手法により、都市は完全に破壊され、守るべきものはいっさい残されていない状態だ。

このやり方は、ロシア政府が言う「特別軍事作戦」の目的とはまったく食い違っている。ロシア政府によれば、特別軍事作戦は、ウクライナ東部と南部に暮らすロシア系住民を「解放する」ことが目的のはずだからだ。

ロシアによる侵攻はむしろ、ウクライナのロシア語圏を壊滅させる戦争へと変わってきている傾向が強い。ウクライナが領土を死守するために必要な重火器が西側諸国から届き始めているなか、前線では砲撃が届くすべての場所で、徹底的な破壊が続きそうだ。
(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

維新、連立視野に自民と政策協議へ まとまれば高市氏

ワールド

ゼレンスキー氏、オデーサの新市長任命 前市長は国籍

ワールド

ミャンマー総選挙、全国一律実施は困難=軍政トップ

ビジネス

ispace、公募新株式の発行価格468円
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 6
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 7
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 8
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中