最新記事

アメリカ

解放ムードにお祭り騒ぎ──「コロナ収束を信じたい心理」が強すぎるアメリカ

THE PRICE OF COMPLACENCY

2022年6月8日(水)16時25分
フレッド・グタール(本誌記者)
米議会

BILL CLARKーCQ ROLL CALL/GETTY IMAGES

<世界各国でコロナ犠牲者数にばらつきがあるのは、国の対策・対応力の結果である。現在、アメリカは死者数が100万人を超えたが、実は「超過死亡」は31~44%という試算がある。それにもかかわらず、「コロナは終わった」と対策費を削る大物議員らがいる>

いまアメリカは、コロナ禍からの解放ムードにあふれている。

マスクを着ける人は減り、バーは混雑し、子供たちは学校に戻った。最も規制が厳しかったニューヨーク市でさえ今ではワクチンの接種証明がなくてもレストランに入れるし、学校でのマスクの着用義務も撤廃された。大リーグの開幕戦では約5万人の観客が、(ほぼ)マスクなしで熱い声援を送った。

コロナ禍を忘れたいのは、議会も同じらしい。新型コロナウイルスの検査、ワクチン、治療に割かれた予算は尽きかけ、追加の予算はロシアのウラジーミル・プーチン大統領の良心よりも乏しい。

追加支出に反対する議員の先鋒は、共和党のミット・ロムニー上院議員。3月初めにジョー・バイデン大統領に宛てた書簡に、「われわれは超党派の歴史的法案を支持し、新型コロナウイルスの検査、ワクチンの開発と接種、治療に、前例のない巨費を投じた」と書いた。「さらなる支出が必要な理由が分からない」

ロムニーをはじめ書簡に署名した36人の議員は、追加支出を議論する前に今までコロナ対策に投じた6兆ドルの使途を明らかにせよと要求。4月に上院はようやく追加支出に合意したが、規模はバイデンが提案した額の3分の2の100億ドルだった。

米議会がぐずぐずしている間も、アメリカで100万人、世界では推計で1800万人の命を奪った可能性が指摘される新型コロナウイルスの流行は続く。欧州では規制が緩和され、さらに感染力の強いオミクロン株BA.2系統への置き換わりが進んだことで感染者数が急増した。

コロナウイルスは今後も私たちを不意打ちするのか。ワクチンや感染で獲得した免疫を擦り抜ける変異株が出現し、コロナ疲れした国を再び長い低迷期に突き落とすのか。

3月、ロシアのウクライナ侵攻がニュース番組を独占するなか、20数人の専門家から成るロックフェラー財団の委員会が、報告書「次のニューノーマルへの到達と維持のために──新型コロナ共生ロードマップ」をまとめた。ここで描かれたのが、今後1年間に予想されるシナリオだ。

報告書によれば、重症化のリスクが抑えられ、感染力が強い変異株が現れなければ、犠牲者は毎年1万5000~3万人になるとみられる。一方、免疫による防御が効かず致死性の高い変異株が登場すれば、犠牲者は大幅に増え、12カ月で10万~30万人が死亡する可能性があるという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

サムスン電子、第3四半期は32%営業増益へ 予想上

ビジネス

MSとソフトバンク、英ウェイブへ20億ドル出資で交

ビジネス

米成長率予想1.8%に上振れ、物価高止まりで雇用の

ワールド

マダガスカル、クーデターで大統領が出国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇敢な行動」の一部始終...「ヒーロー」とネット称賛
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中