最新記事

科学

関東某所の井戸で「幻の虫」を発見?──昆虫学者は何をやっているのか

2022年6月1日(水)11時14分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
昆虫

Hakase_-iStock

<絶滅危惧種「カントウイドウズムシ」を探していたはずが、見つかった未知の生物とは? 昆虫学者の日々の生活、そして未来の「昆虫ハカセ」たちにとって夢ある研究環境とは?>

「大きくなったら昆虫ハカセになりたい」──という、かつての昆虫少年は少なくないのではないだろうか。

しかし、そもそも「昆虫博士」という学位は存在しない。厳密には、昆虫学者の多くは「理学博士」か「農学博士」である。

そんな昆虫ハカセは普段はいったい何をしているのか? もしかして博士号まで取得して、野山を駆けずり回っているのか?

答えは「イエス」。ある昆虫学者の1日はこうなっている。

100円ショップで売っている出汁パック(目の細かいメッシュ状の袋)を井戸の吐出口にかぶせ、輪ゴムで固定する。それからポンプのハンドルに手をかけて勢いよく漕ぎ出し、連続で100回ほど漕いだところで、出汁パックを外す。それを、水を張ったプラスチックの容器内で洗う。

出汁パックの中には、水に交じり出てきた沢山の土砂が溜まるので、これを容器内で洗い出し、何か妙なものが一緒に出てきていないか観察する。

しかし、10回、20回では、目指す生き物は出てこない。1日1000回を目標に、来る日も来る日も、ポンプ漕ぎ続ける。周りから見ると、謎の屈伸運動を行う挙動不審の中年である。しかし、これを続けたことで、ある「幻の虫」が関東某所の井戸で出てきたのだ。

「幻の虫」を発見した昆虫学者の小松貴は、信州大学大学院で博士号取得後、九州大学や国立科学博物館で研究員をしたのち、現在は「在野の研究者」として、日々、虫の研究を続けている。近著『怪虫ざんまい──昆虫学者は今日も挙動不審』(新潮社)には、昆虫学者の暮らしぶりと世紀の発見について書かれている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ドイツ下院、新たな兵役法案承認 ロシア脅威で防衛力

ワールド

NYタイムズ、パープレキシティAIを提訴 無断複製

ワールド

プーチン氏、インドに燃料安定供給を確約 モディ首相

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開きコーデ」にネット騒然
  • 4
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 5
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 6
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 8
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 9
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中