最新記事

航空戦

ロシア空軍が弱いのは何もかも時代遅れだったから

Search WORLD Exclusive: Russia's Air War in Ukraine is a Total Failure, New Data Show

2022年5月26日(木)19時33分
ウィリアム・アーキン(元米陸軍情報分析官)

ウクライナ軍に撃墜されたロシアSu-35戦闘機(4月3日、ハルキウ) Ukrainian Armed Forces General Staff/REUTERS

<ロシア空軍は物量だけで、精度や作戦はベトナム戦争以後兵器も戦術も飛躍的に進化させた米軍の30年前のレベル。ウクライナからルーマニアに続くザトカ橋を10回近く空爆して破壊できなかったのがその証拠だ>

ロシア軍がウクライナ攻撃に使ったミサイルの数は第2次世界以降の最多を記録している。だが、航空戦の専門家が指摘するように、投じた物量の割に、ロシア軍の挙げた戦果はあまりに乏しい。本誌が独占的に入手したデータもそれを裏付けている。

「この恐るべき数字を見てほしい。わずか2カ月余りで、ロシア軍はわが国の都市や町や村に2154発ものミサイルをぶち込んだ」ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は先週そう訴えた。「ロシアの爆撃は昼も夜もやまない」

しかし、見境のない重爆撃はプーチンの戦争を勝利に導くことにほとんど貢献していない。そこから将来の戦闘に役立つ貴重な教訓を引き出せそうだ。

米軍とロシア軍が行った2つの橋に対する攻撃が参考になる。1つは50年前の北ベトナムの橋、もう1つは先週起きた黒海に臨むウクライナのリゾート地ザトカの橋への攻撃である。

制空権が奪えない

ロシア軍がミサイルの使用数で最多記録を打ち立てたちょうどその頃、ゼレンスキーはウクライナ軍が破壊したロシアの軍機が200機に上ったと発表した。これは、ウクライナと比べて15倍もの規模を誇るロシア空軍にとっては、あまりにも不名誉な記録だ。

同時期に打ち立てられたこの2つの記録を見て、世界中のコメンテーターがウクライナの強固な抵抗をたたえ、ロシアは数の上で圧倒的に有利であるにもかかわらず、その強みを生かせていないと指摘した。ロシアの失敗は、ウクライナ上空の制空権を確立できなかったことにあり、ロシアは既に精密誘導兵器を使い果たし、補給もできない状態に陥っていると見られている。

名誉挽回のためか、ロシアは22日、「特殊軍事作戦」の開始以来、ウクライナ軍機165機を破壊したと発表した。しかし、この数字はどう見ても疑わしい。165機はウクライナが保有する飛行可能な戦闘機数のほぼ3倍に当たるからだ。

「ロシア空軍はいまだに制空権確保のための作戦を実行する気がないようだ」と、英空軍の元中将であるエドワード・ストリンガーは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中