最新記事

米中関係

バイデンは中露分断のチャンスをふいにした

Is Biden Missing a Chance to Engage China?

2022年5月24日(火)19時33分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌上級特派員)

米国家情報長官室は2019年、中国とロシアは「1950年代半ば以降、どの時点より足並みがそろっている」としたうえで、こう述べている。「この関係は強化される可能性が高い。特に、両国が見るところの米国の覇権主義や介入主義、西側による民主主義的価値観や人権の推進について、両国の利害と脅威の認識の一部が一致しているためだ」

中ロ両国のそうした利害は今も一致している。とりわけ、アメリカの権力と影響力を削がなければならない、というのは共通認識だ。

一方、キッシンジャーやロードをはじめとする中国専門家は、気候変動、COVID-19、北朝鮮の核ミサイル拡散などの重要課題に不可欠な米中の協力関係が弱まっているのはまずいと指摘する。中国が、これらの大義に向けて協力する条件として、米国側の対立姿勢の緩和や関税の軽減を要求しているためだ。

半世紀前に国交正常化を成したときの米国と中国は、政治体制や民主主義などの基本的な問題について、意見の相違がありながらも合意を形成することができたと、専門家は指摘する。

なぜ追加関税を撤廃しないのか

いま中国政府関係者は非公式な会話で、バイデンが中国との対立姿勢を崩さないことへの困惑を示している。中国政府関係者によれば、ウクライナは完全な主権国だが、台湾は中国の一部であることは米国も認めているという。バイデンは5月23日、中国が台湾に侵攻すれば軍事介入すると言ったが、米国が50年前に「一つの中国」政策を受け入れ、これがウクライナと台湾の立場を区別するものになっていることも再確認している。

一部の中国専門家は、バイデンは前任者のドナルド・トランプが中国に科した制裁関税の一部を解除できるはずだと指摘する(バイデン政権の関係者でさえ、追加関税はインフレに苦しむ米国民にさらなる負担を強いているし、中国の保護主義的な貿易慣行の是正にも役立たなかったと認めている)。ある政府高官は5月に入ってから、「追加関税の多くには、戦略的根拠がない」と認めた。

米商務省の次官だったウィリアム・ラインシュは、「トランプの政策は明らかに失敗だ」と断言した。「そして明らかに、ウクライナは世界のダイナミクスを変えている」

しかし、バイデン政権はこの数カ月、中国に対するアプローチを大きく変えていず、むしろ好戦的な姿勢を強めている。バイデンは何度か習とバーチャル首脳会談を行い、国家安全保障問題担当補佐官のジェイク・サリバンも5月に入って中国の外交トップの楊潔チと会談したにもかかわらずだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド26年度予算案、財政健全化の鈍化示す フィッ

ビジネス

ウォーシュ氏のFRB資産圧縮論、利下げ志向と両立せ

ワールド

米特使、イスラエルでネタニヤフ首相と会談へ=イスラ

ワールド

シンガポール、宇宙機関を設立へ 世界的な投資急増に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 3
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタリア建築家が生んだ次世代モビリティ「ソラリス」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 6
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 7
    中国がちらつかせる「琉球カード」の真意
  • 8
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 9
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 10
    エプスタイン文書追加公開...ラトニック商務長官、ケ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中