最新記事

ロシア

ロシアが苦しむ「ゾンビ森林火災」 ウクライナ進軍で国内消防に暗雲

2022年5月11日(水)15時40分
青葉やまと

火のみえない「ゾンビ火災」

シベリアでは毎年、表面からはみえない火が雪の下でくすぶり続け、春になると大規模な火災のきっかけとなる「ゾンビ火災」を繰り返してきた。

シベリアン・タイムズは昨年1月、ゾンビ火災の様子を収めた動画を公開している。雪に覆われた美しい森林だが、どこからともなく立ち上る煙が充満している点で異様だ。

さらに注意すると、所々の雪が溶けて穴が空いているのがわかる。また、パチパチと何かがはぜる音も時々聞こえる。凍土に含まれる泥炭が燃焼を続け、穴を通じて煙が上がってきているとみられる。動画撮影者の男性は、「まだ燃えている......。」「(燃えている)泥炭があるのだろう」と呟いている。

シベリアは、現在地球上でもっとも速く温暖化が進行している地域のひとつだ。凍土中からメタンガスが放出されることで状況の悪化につながるほか、火災による煤が北極に到達すると、海氷の融解を促進する。

さらには夏場に北極海の氷が失われると、ジェットストリームが乾燥した高温の気流をアメリカ西部に運びやすくなり、米西部でも森林火災が悪化するとの研究がある。シベリアの火災は極めて広い範囲に影響を与えるようだ。

Zombie fire in Yakutia


侵攻の今年、もはや支援の手はなく

ゾンビ火災は毎年雪解けの季節になると、大規模な森林火災を引き起こす。例年、火災の発見と対処は軍の任務の一部となっているが、今年はウクライナ侵攻に人員を割かれ、森林火災への対応が手薄となりそうだ。

インディペンデント紙は、「通常対処を行なっているロシア軍の複数の部隊が戦闘のためウクライナに派兵されていることから、シベリアでは森林火災の確認が行われず、燃えたまま放置されている」と報じた。

過去にはベラルーシを挟んだポーランドからも消防隊が応援に駆けつけているが、制裁の行われている今年はその支援も停止される模様だ。

中央ヨーロッパのニュースを発信する『ヴィシェグラード』は、ロシアの行動を嘆く。「数年前には大規模な森林火災の鎮火を助けるべく、ポーランドから数百人の消防隊員がモスクワ地方へ駆けつけた。これはその際の動画だ。今ではシベリアの半分が燃えているが、誰も助けには来ない。ロシアよ、なぜ友でなく敵を作ろうとするのか?」

ウクライナへの侵攻は、ロシア自身の防火体制にも影を落としているようだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ホルムズ海峡船舶護衛、欧州の多くで慎重論 「われわ

ワールド

トランプ氏訪中、延期の公算 「イラン作戦の成功優先

ワールド

ワイルズ米首席補佐官が乳がんと診断、職務継続へ ト

ワールド

IEA、必要なら追加的な備蓄放出も=ビロル事務局長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 5
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 6
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 7
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 8
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    50代から急増!? 「老け込む人」に共通する体の異変【…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中