最新記事
K-POP

K-POPバンドの差別的歌詞は「すべて事務所のせい」──メンバーに大甘のファン

K-Pop Fans Demand Apology After Epex Song Seemingly References Nazi Pogrom

2022年4月13日(水)15時45分
マット・キーリー

EPEXのメンバーは悪くない? C9 ENTERTAINMENT

<ナチスのユダヤ人虐殺に触れる歌詞を歌うメンバーの責任を問うのはフェアじゃない、とK-POPファンが言う理由は>

Kポップグループ「EPEX(イペックス)」の歌詞が物議を醸すなか、ファンたちが謝罪を要求している。ただし、EPEXにではなく、所属事務所とレーベルにだ。

EPEXは4月11日、サードミニアルバム『不安の書 Chapter1:21世紀の少年たち』と、アルバムからのリードシングル「学院歌(Anthem of Teen Spirit)」をリリースした。歌詞サイト「ジーニアス(Genius)」にある翻訳によれば、この曲の歌詞は「砂糖がけの悪魔」に言及し、その主たるメタファーとして「水晶」を使っている。サビ前の部分の歌詞は、こうなっている。「今夜は、水晶/ぼくらを守っていたものが粉々になる/獲物になる前に/そう、引き金を引け、クリッククラック、ブルルル....」

だが、Kポップファンが眉をひそめたのは、サビの歌詞だ。「Boom!/やつらがナマ焼けになるのが見える/水晶の夜が来る/クリッククラック、ブルルル、そう/Boom!/ここは戦場だ/援護しろ、援護しろ/追え、そして逃げろ」

「水晶の夜」というフレーズは、ドイツ語のクリスタルナハトと同じだ。「水晶の夜」は、1938年に起きた反ユダヤ主義暴動のことだ。ユダヤ人の所有する商店やシナゴーグが襲撃され、「割られて路上に散らばったショーウィンドウの破片が、月明かりに照らされて水晶のように輝いていた」とされるが、ナチス政権はそれを止めずに黙認していた。

その夜の襲撃で90人以上のユダヤ人たちが殺され、それに続く暴行や自殺により、さらに数百人が命を落とした。ドイツおよび、ドイツに併合されたばかりのオーストリアとズデーテン地方(現チェコ領)で、7000軒超にのぼるユダヤ人の商店と、267のシナゴーグが破壊された。

MVにはナチス風イメージ

問題の歌詞に明白な反ユダヤ的表現は見られないが、元の韓国語の歌詞では、「水晶の夜」というフレーズが、歴史上の事件としてのクリスタルナハトを指す含意で使われている。また、この曲のミュージックビデオに登場するナチス風の制服がクリスタルナハトを示唆していると見る人たちもおり、ファンたちはそれも非難している。

このビデオには、EPEXのメンバーが、牢獄内の射撃場で銃を向けられている場面がある。あるシーンでは、バンドメンバーのひとりが牢屋のドアの向こうにいるが、そのドアには「異端の異端は常識であった」と書かれている。これは、ジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984年』からの引用だ。

物議を醸す歌詞をめぐって議論になったほかのケースとは異なり、ファンたちは、バンドそのものを非難するのではなく、レーベルと所属事務所「C9エンターテイメント」に矛先を向けている。この曲のクレジットには、バンドメンバーの名前は書かれていない。また、ロサンゼルス・タイムズによれば、Kポップの活動は、米国のスターと比べてはるかにがっちり管理されている。所属事務所がグループのイメージ全体を管理しており、必要条件を満たさないと判断されたら、メンバーの入れ替えにも躊躇しない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中