最新記事

ロシア政治

プーチンの盟友チュバイスが要職を捨てて出国、「戦争に抗議」は本当か

Putin Ally Anatoly Chubais Leaves Kremlin Post in Protest of Ukraine War

2022年3月24日(木)14時31分
エリン・ブレイディ
チュバイス

オリガルヒ(新興財閥)の生みの親とも言われるチュバイス Sergei Karpukhin-REUTERS

<ウクライナ侵攻に対する抗議の辞任というが、本当は身を守るためだという批判も>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の盟友の一人であるアナトリー・チュバイスが、国際機関担当の大統領特別代表を辞任した。匿名の情報筋がブルームバーグに明かした。チュバイスは、ウクライナでの戦争への反対を公言していた。

それ情報筋によれば、辞任の理由はロシアによるウクライナ侵攻への反対だが、ロシア政府の複数の当局者は、この件について公式なコメントを拒んでいる。チュバイスは、ウクライナ侵攻をめぐって辞任したロシア当局者の中では、最も高位となる。

チュバイスは既にロシアを出国しており、戻るつもりはないということだ。前述の情報筋は彼の行き先を明らかにしていないが、ロシアのコメルサント紙は、トルコのイスタンブールでATMから現金を引き出す姿が確認されたのが最後だと報じた。

もっとも、反戦が辞任の理由だという説明を誰もが信じているわけではない。ロシアの反体制運動の指導者アレクセイ・ナワリヌイの広報担当者は、ツイッターへの投稿で、チュバイスが「ロシアを出たのは、自分の身と資産を守るためでしかない」と指摘した。

裏切り者の出国は「自浄作用」

ロシアにおけるチュバイスの評価は複雑だ。彼はロシアのエネルギー・石油産業成長の立役者の一人である一方で、ロシアの民営化政策を推し進める過程で、一握りの実業家を裕福にさせたと批判もされている。オリガルヒ(新興財閥)と呼ばれるこれらの実業家は、このところ各国による制裁の対象となり、国外脱出も相次いでいる。

ウクライナ侵攻以降、チュバイスなど数多くのオリガルヒや市民が国外に逃れていることについて、プーチンは最近の発言の中で「社会に必要な自浄作用」だと述べた。「どんな人も、特にロシアの人々は、真の愛国者と駄目な人間や裏切り者を区別することができる。そして彼らを、口の中に偶然飛び込んできた小さな虫のように、吐き出すだろう」と彼は述べ、さらにこう続けた。「この自然な、そして社会に必要な自浄作用は、私たちの国やその連帯、団結や、あらゆる困難に立ち向かう覚悟をますます強固なものにすると私は確信している」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBが金利据え置き、4会合連続 インフレ見通し一

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ワールド

IS、豪銃乱射事件「誇りの源」と投稿 犯行声明は出

ビジネス

ECB、成長率とインフレ率見通し一部上方修正=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 7
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 10
    欧米諸国とは全く様相が異なる、日本・韓国の男女別…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中