最新記事

米軍事

「中国には奪われるな」南シナ海に沈没のF35C 米海軍、水深3000mの海底から回収

2022年3月4日(金)19時30分
大塚智彦
水没するF35Cライトニング

甲板をオーバーランし水没するF35Cライトニング Focus Tech / YouTube

<ステルス機がオーバーランし水没、さらにその動画が流出。さらなる失態は許されなかった>

米海軍第7艦隊は南シナ海で空母への着艦に失敗して海中に沈んだ最新鋭戦闘機F35Cライトニングの捜索、回収作業を行っていたが、3月2日に海底からの機体回収に成功したと3日に発表した。

1月24日に沈没したF35Cを巡っては事故海域の南シナ海の大半で一方的に海洋権益を主張している中国がF35Cのステルス性能や最新鋭のIT技術が満載の機体への関心から独自の機体発見回収に乗り出す可能性も指摘され、米海軍は総力を挙げての回収作戦を展開していた。

水深3000から3500メートルという深海であることから数カ月要するとの見方もあった作業は事故発生から37日間で回収に成功したことで、米海軍の機体回収に対する強い決意が反映される形となった。

着艦直後に炎に包まれ海面墜落

事故は1月24日、フィリピン・ルソン島西方の南シナ海で行動中の空母打撃群の空母「カールビンソン」の艦載機で上空での訓練飛行を終えたF35Cが空母飛行甲板への着艦に失敗した。

乗組員からネット上に漏洩した動画では、事故を起こしたF35Cは着艦直後に機体後方から出火。機体は炎に包まれて飛行甲板を進み、海面に墜落した。

機体はしばらく海面に浮いていたが、その後海底に沈没した。パイロットは緊急脱出してその後救難ヘリに無事収容された。この事故で空母乗組員6人が負傷してフィリピン・マニラの病院に緊急搬送されたが、命に別状はないと伝えられた。

機体が沈んだ南シナ海は中国が一方的に自国の海洋権益が及ぶ範囲とする「九段線」の海域とされ、中国側も軍事機密が満載されたF35Cの機体に強い関心を抱いて、米軍による機体発見回収が失敗した場合には独自に回収する可能性が指摘されていた。

中国側は会見で「事故機には関心ない」との公式の立場を示していたが、額面通りには受けとられていなかった。

懸命の作業で早期回収に成功

米海軍は事故発生を重視し、深海作業支援船「ピカソ」を沖縄から事故海域に急派すると同時に無人深海作業艇など複数の作業艦艇を現場に投入して、機体の発見と回収作業を急いでいた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

バイデン氏、ウクライナ支援法案に署名 数時間以内に

ビジネス

米テスラ、従業員の解雇費用に3億5000万ドル超計

ワールド

中国の産業スパイ活動に警戒すべき、独情報機関が国内

ビジネス

米耐久財コア受注、3月は0.2%増 第1四半期の設
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 2

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 3

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」の理由...関係者も見落とした「冷徹な市場のルール」

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 6

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    コロナ禍と東京五輪を挟んだ6年ぶりの訪問で、「新し…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中