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あのときニクソンが訪中しなければ、「中国の脅威」は生まれなかったのか?

THE VISIT 50 YEARS ON

2022年2月24日(木)17時24分
ミンシン・ペイ(本誌コラムニスト、クレアモント・マッケンナ大学教授)

米中関係は不安定だったが、ニクソンと当時のキッシンジャー大統領補佐官が立案した対中政策は10年ほど前までは両国に利益をもたらし続けた。中国の習近平(シー・チンピン)体制下の対外拡張主義で、この政策の継続は不可能になった。それでも、敵同士だった両国の間に40年にもわたり、平和と繁栄、安定をもたらしたこのアプローチは目覚ましい成功だったと評価されるべきだ。

アメリカと同盟諸国が敵対的な中国に相対している現在、ニクソンのような冒険的外交にもう一度懸けてみたくなる気持ちは分かる。ワシントンの識者の間には、アメリカが「逆ニクソン」、すなわちロシアのプーチン大統領を中国から引き離す戦略を仕掛けるべきだという主張もある。

だがこの主張は、ニクソン時代と現代の決定的な違いを見落としている。いまプーチンがウクライナ侵攻をちらつかせつつ要求しているように見えるのは、欧州のポスト冷戦体制の抜本的見直しだ。中ロの結び付きを弱めることと引き換えに、欧米諸国がその要求をのむ可能性は低そうだ。

対照的にニクソンは、痛みを伴うほど中国に譲歩する必要性には迫られなかった。50年前の訪中は、地政学的にそれほど頭を悩ませることではなかったのだ。

©Project Syndicate

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