最新記事

日本社会

女性の政治参加が進まない背景にある、日本の社会科教員の女性比率の顕著な低さ

2022年2月9日(水)11時40分
舞田敏彦(教育社会学者)
女性教員とクラス

教員の性別構成は教科によってかなりばらつきがある Drazen Zigic/iStock.

<他の主要国と比較すると、日本の社会科教員の女性が占める割合は特異的に低い>

毎年、国別のジェンダー平等指数が公表される。日本の現状が壊滅的なのは毎年のことだが、とくに政治分野が酷い(2021年は156カ国中120位)。国会議員など、政治家の女性比率が著しく低いためだ。

これがなぜかについて、女子は頭を押さえつけられて育つとか、政治の話を女子がすると変な目で見られるとか、世間一般で言われることを反すうしてもあまり意味はない。井戸端談義ではなくデータで可視化でき、かつ政策で変えることができるような要因に注目すべきだ。例えば、進路選択を控えた女子生徒が目にする職業モデルはどうだろう。政治や経済について語る女性、具体的には学校で社会科を教える女性教員だ。こういうロールモデルに多く接するならば、女子の政治的関心も高まると見られる。

文科省の『学校教員統計』に、各教科を担当している教員のパーセンテージが出ている。2019年の高校のデータを見ると、国語を担当している教員の割合は男性で9.0%、女性で19.2%。ベースの本務教員は男性が15万2446人、女性は7万1592人なので、先ほどの比率をかけて国語担当教員の実数を出すと男性は1万3720人、女性は1万3746人と見積もられる。ほぼ半々だ。

他の教科はどうか。同じやり方で各教科の担当教員の実数を男女別に出し、内訳をグラフにすると<図1>のようになる。

data220209-chart01.png

国語は男女ちょうど半々だが、教科によって異なることが分かる。男性より女性が多い教科は音楽、書道、家庭、福祉で、それ以外は男性の方が多い。よく知られているが、数学や理科教員の女性比率は低い。理系に進む女子を増やすに当たって、これをどうにかしないといけないことはしばしば指摘される。

しかしもっと女性比率が低い教科がある。それは公民だ。公民を教える教員のうち女性は14.0%で、どの教科よりも低い。政治や経済について説く女性のモデルを、学校で女子生徒になかなか見せられない。こういう現実がデータで分かる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、政策の柔軟性維持すべき 不確実性高い=独連

ワールド

韓国、対米通商交渉で作業部会立ち上げ 戦略立案へ

ビジネス

日経平均は反発、円安を好感 半導体株高も支え

ビジネス

村田製作所、マイクロ一次電池事業をマクセルに80億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中